Tems『Born in wild』徹底解説 アフロビーツが巻き起こす新たな風
総括:躍進するナイジェリアン・ポップス
静謐な夜の心地よさも、その先の太陽の輝きも知る、繊細さと力強さを併せ持ったアーティストとして充実した作品である。自身のアイデンティティを世界の最先端のポップスとして見事に昇華した本作は、躍進するナイジェリアの音楽シーンのレベルの高さを証明している。 テムズは諸外国ではすでにスターであるが、このアルバムは日本でも幅広くリスナーの心を捉えられるポテンシャルを持った作品だと思う。特にR&B/ヒップホップのファンには、アフロビーツ普及のきっかけになる特別な一枚になり得るだろう。 まもなく南アフリカのタイラがサマーソニックに来日するが、テムズも来年以降、夏フェスのラインナップ候補に挙げられても不思議ではない。それだけのポテンシャルを秘めたアーティストなのは、ライブ動画などを見れば納得していただけるだろうし、来日実現のためにもSNSや口コミ、クラブイベントに遊びに行くなどぜひ積極的に支援してほしい。 また、テムズのほかにも、ナイジェリアには素晴らしいアーティストがたくさんいる。ウィズキッドやバーナ・ボーイ、アサケ、テムズのファンにぜひ勧めたいAyra Starr(アイラ・スター)、動画中でアフロビーツの素晴らしさを説いてくれたSarz、Rema、Olamide……筆者が最近気に入っている顔ぶれを挙げるだけでも、あっという間に数えきれなくなるぐらいだ。上記アーティストの曲を聴いただけで非常に幅広く、そして素晴らしい才能がひしめき合っていることがわかるだろう。今回紹介したテムズのアルバムをきっかけに、日本でもアフロビーツの注目がさらに高まることを願っている。 ※筆者より:アフロビーツというジャンル名はアーティストによっては忌避されることもあるが、日本で最も知られている呼称であるため、今回はアフロビーツで統一した。 --- テムズ 『Born In The Wild』 配信中 ※フィジカル盤発売は未定 audiot909(オーディオットナインオーナイン) プロデューサー/DJ/ライター。 元々ハウスのDJだったが、2020年からアマピアノ制作に着⼿。 2023年11⽉にリリースした1stフルアルバム『JAPANESE AMAPIANO THE ALBUM』には、あっこゴリラ、荘⼦itらも参加。音楽活動と並⾏して執筆活動や現地プロデューサーへのインタビュー、ラジオ出演など様々なメディアにてアマピアノの魅⼒を発信し続けている。 ※参考文献 《アフリカ人女性として初めてビルボードHOT100で1位を獲得、最も身近な真実を表現するTemsとは?》 《Temsー今最もアルバムを期待されているナイジェリアの若手筆頭》 《J-WAVE「SONAR MUSIC」で紹介した次世代のアフロビーツクイーン「Tems」~Next Queen of Nigerian Afrobeats~》
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