高橋英樹、役所広司、春風亭小朝…アドリブ満載〝3人〟がしゃべりまくり それぞれ個性のある殺陣も魅力「三匹が斬る!」
【奇数が当たる!? 集団時代劇の世界】 「奇数は当たる」といわれる時代劇。「三」の有名作といえば、歌舞伎では「三人吉三」、映画では「隠し砦の三悪人」、ドラマでは1963年から、フジテレビで放送された「三匹の侍」がある。リーダー格の柴左近(丹波哲郎)、旗本の息子でモテ男の桔梗鋭之介(平幹二朗)、ひょうきんな槍の名人・桜京十郎(長門勇)、はぐれ者3人が旅をしながら悪と戦うモノクロ作品だ(第2シリーズからは丹波に代わり、加藤剛が出演)。 それから約20年の時を経て、テレビ朝日系でスタートしたのが「三匹が斬る!」(87年~)であった。浪人ながらどこか品のある「殿様」こと矢坂平四郎(高橋英樹)、千石とりの武士になるべく自分を売り込む熱血剣士「千石」こと久慈慎之介(役所広司)、どこかインチキくさいが憎めない「たこ」こと燕陣内(春風亭小朝)。彼らはしっかり者の娘お恵(杉田かおる)とともに事件の黒幕を見つけ、殿様が悪人をしかりつけ、千石が「おめえら、みんな地獄にたたき込んでやる!」とカッカして、さらにその横では、殿様を「平ちゃん」と呼ぶたこがいるという具合。3人のアドリブ満載のかけ合いは絶妙だ。彼らとぶつかるゲストも藤岡琢也、オール阪神・巨人、成田三樹夫、ストロング金剛、いしのようこら多彩な顔触れ。今では大御所となった3人が、自由自在に暴れまわり、しゃべりまくる。 3人それぞれ個性のある殺陣も魅力のひとつ。華麗な太刀さばきを見せる殿様、愛刀・同太貫を手に豪快に斬る千石、シャキン!と仕込み槍を操るたこ。大立ち回りのシーンが長く、敵の数が多いのも特長で、見せ場はたっぷり。締めくくりは、殿様が真っ白い懐紙をパーッと頭上に舞い散らせる決めポーズ。この爽快感も名物になった。 「三匹」はその後、「続」「続々」「また又」などとタイトルを変え、第6では「ニュー三匹が斬る!」と英語まで入れる懐の深さを見せた。シリーズは、新メンバーに近藤真彦、お供の娘に長山洋子らも加入しながら約8年続いた。この後、99年には、丹波哲郎、谷啓、里見浩太朗の「三匹のご隠居」も登場。3人組の勧善懲悪のロードムービー、そろそろ新作も見たい。 (時代劇研究家・ペリー荻野) ■三匹が斬る! 第1シリーズは1987年10月22日~88年3月31日まで全21回、テレビ朝日系木曜夜8時から放送。95年の第7シリーズまで続く。