「32日間の水だけ断食」をした人の悲劇…意識の高い人はボロボロになり、ズボラな人がピンピンしている真の理由
■「○○を食べるだけでいい」の罠 健康法のもうひとつの選択は、「ズボラのままでいい」というもの。あらゆるシーンで見かける「○○だけでいいですよ」という誘いだ。人は誰しも病気になりたくない。だからといって、食事法や運動法を継続的に実践したいわけではない。できることなら、最低限のエネルギーでそれを得たい。 そこで、健康法の提供者たちは、あらゆる手段を使って「ズボラ合戦」を行う。 ○○を食べるだけでいいです。 1日たった1分でいいです。 あなたは変わらなくて構いません。 つまり、「やりたくない」気持ちに寄り添った“甘い誘惑”をしてくる。これらは誰に対しても当てはまる内容にもかかわらず、オファーを受けた人はまるで「ズボラな私のためにあるサービスだ」と自分特有のものであるように錯覚する。心理学で「バーナム効果」と言われるものだ。 しかし、みんな心のどこかで本当はわかっているはずなのだ。「そんなうまい話はない」と。 ところが、どうしてもそれらを衝動的に選択してしまう。 「なりたくない」と「やりたくない」。どちらもアンウェルカムなもの。 病気になりたくないから、やりたくない健康法を“しかたなく”やる。老けたくないから、やりたくない美容法を“しかたなく”やる。 ■負の連鎖から抜け出さないと幸せは訪れない とはいえ、やりたくないものが続くはずがない。続かないから、また別のやりたくない方法を選び直す。しかし、それも続かない。その結果、行き着くのは「自己嫌悪」だ。何をしても続かない自分への嫌悪や惨めさが湧き出してくる。これではhealthどころか、illnessになってしまう。 私は、この負のループを「アンウェルカム・ループ」と呼んでいる。 世の中に溢れる疾病(しっぺい)産業(病気に関連する産業)を中心とした「ヘルスケア」の情報やサービスは、意図して行っているわけではないとしても、結果的に、人々をアンウェルカム・ループに誘い込んでしまう。回し車をひたすら走り続けるハムスターと同じで、行き着く先には疲労感と自己嫌悪が待っている。 いつも自分に「足りない」ものを探し、「なりたくない」ものに怯え、「やりたくない」ものを衝動的に選び、「続けられない」ことで自分を責める。このアンウェルカム・ループから抜け出さない限り、幸せで穏やかな日々は訪れない。 ---------- 石村 友見(いしむら・ともみ) Life is Wellness代表/ヨガ講師 ハーバード大学医学部「Health and Wellness講義」講義修了。劇団四季で『ライオンキング』に出演後、単身ニューヨークに渡り、ブロードウェイ・ミュージカル『ミス・サイゴン』に出演。その後ヨガスタジオを設立し、レッスンからヨガ講師の育成まで尽力。2018年に発表した著書『ゼロトレ』はシリーズ120万部の記録的ヒットとなり、『金スマ』『世界一受けたい授業』など多くのテレビ番組に出演。その後、ハーバード大学医学部「Health and Wellness」講義にて、ウェルネスの観点から世界最先端の栄養学をはじめ運動、コミュニケーションについて学ぶ。企業研修や企業とのコラボ、商品開発プロデュースなど多数。現在は、ニューヨークと東京を行き来する生活。1児の母。 ----------
Life is Wellness代表/ヨガ講師 石村 友見