「32日間の水だけ断食」をした人の悲劇…意識の高い人はボロボロになり、ズボラな人がピンピンしている真の理由
■無計画な「断食ダイエット」の深刻なリスク 私が住むニューヨークでも、断食はとても人気のあるダイエット法だ。16時間断食を時折行う人や、週に1日だけ断食をする経営者などもいる。やせることを目的にしている人もいれば、胃腸への負担を軽くして体調を良くする目的の人もいる。素晴らしい効果を実感している人もいるし、逆に効果が出ないどころかリバウンドで断食前より太る人もいる。 問題は、これらが「衝動的に」行われるケース。 私の知人に、まるでジェットコースターに乗っているように生活リズムを衝動的に作ってしまう女性がいる。彼女は食への執着がとても強く、四六時中「次は何を食べよう⁉」と考えている。一瞬の快感のために過食をし、その直後に罪悪感を覚え、丸一日何も食べずに我慢し、結局また過食に走ってしまう。 彼女は健康法に関心があり、次々と取り入れては、そのたびにリバウンドして「自己嫌悪」に陥る。 こんなアップダウンを繰り返しながら体と心のダメージを積み重ねてしまう。彼女の肌はボロボロだし、体重は年々増えていくし、背中も丸くなってきた。以前より声が小さくなったのは、自信のなさの表れだろう。何より、自分のことを好きじゃなさそうだ。 ■なぜ私たちは衝動的に選んでしまうのか ある日、彼女がある断食センターに宿泊していると知った。私は断食センターそのものをまったく否定していない。あくまで安全なセンターと危険なセンターがあるという認識だが、彼女のそれまでの衝動的な生活リズムを見てきたため心配になり、「会いに行ってもいい?」とメッセージを送った。 既読になってからちょうど2日が経った頃、彼女から長文の返信があった。そこには、 「TOMOMIが来て私に何を言うつもりかわかっているから来なくていい」 「断食を始めて五感がとぎすまされた。以前はわからなかった花や木や建物の匂いがわかる。これがわからないあなたたちはかわいそうだ」 といった趣旨が書かれていた。「あなたたち」という言葉に、こちら側とあちら側の断絶が感じられ、彼女がつながりをハサミでプツンと切った音がした。 私は「元気そうでよかった」とだけ返した。 減量をした人の95~98%が元の体重に戻る。断食は短期的にはやせることも多いが、長期的にはリスクも抱える。とはいえ、繰り返しになるが断食の良し悪しを問いたいわけではない。世界中の健康法の多くには、つねにリスクとリターンが同居している。問題は、彼女のようにそれらを衝動的に選んでしまうことだ。 食べ物について、運動について、睡眠について、メンタルヘルスについて、あらゆるヘルス産業が画期的な方法を提供している。健康サプリメント、ヘルスフード、ヘルスセンター、ヘルスグッズ、出版、SNS、動画ビジネス。