感染者たたき、感染者の謝罪は自分たちの首を絞める 岩田教授に聞く「誰でも感染する」怖さ
陰性になってもウイルスはしばらく出続ける
──4月10日現在、感染の勢いが落ちたわけではないですが、日本でも12%以上、クルーズ船(ダイヤモンド・プリンセス号)乗船者では約9割は退院に結びついています。一方で、一度「陰性」になった人が再び「陽性」になる例も出ています。 まず「陽転」するメカニズムはまだ突き止められていません。 ただ、ウイルスをもっていることと、せきや発熱など病気になっていることは同じではありません。ウイルスが出るか出ないかは検査の問題で、無症状の人からウイルスが見つかることはよくあることです。また、一度陽性になった人に対するウイルス検査をする日々の中で、(検出結果に)上がったり下がったりのブレはあるものです。つまり、ある程度の時間をかけて(り患者のウイルス量が)下がっていくとき、たまたまその値がすごく下がったときに陰性という検査結果が出ただけかもしれない。
緊急事態宣言は誰でも感染しうるという前提
──感染した人は、どれくらいの時間が経過すれば、他人にうつすことを気にせず生活できるのでしょうか。 一度感染した人は、陰性という結果が出たとしても、数週間はウイルスを出し続けているという認識をもっておくべきです。 「周囲の人に対して距離をとる」「マスクをする」「できるだけ外に出ない」。いまわれわれがやっているソーシャルディスタンス(社会的距離)、緊急事態宣言というようなことを念頭に置いておく。 医療機関から見ると、患者というのは病気が治ればいい。だから、(せきや発熱など)症状が軽い人は退院させていいし、それで正しいんです。ただ、感染症はほかの人にうつす可能性があるので、その人は一定の行動を慎んでもらう。それはいまの緊急事態宣言の前提条件と同じで、すべての人が感染しているかもしれない想定での行動自粛なんです。 ──たとえば陰性になったあと、1カ月、2カ月という時間がたっていれば、もうウイルスの感染は問題ないのでしょうか。 それはわかりません。個人差があるからです。感染者からウイルスが最長でどれくらい出続けるのかはわかっていません。こうしたウイルスの排出量は(ゆるやかな山型を描く)正規分布を描いて時間がたつなかで減っていきます。ただ、その期間は平均で2、3週間ほどですが、もっと短い人もいるし、長い人もいる。だからといって最長期間に合わせて人を規制すればよいかというと、そうではありません。 たとえばノロウイルス。あれで下痢になった場合、便とともに排出されるノロウイルスがどのくらいの期間出ているかと言えば、実は3カ月間ぐらいあります。でも、ノロウイルスに感染した板前さんを3カ月間休ませる医療機関や保健所はあまりないでしょう。そこまでの長期間にわたる危険性はない、と判断できるからです。