仕事はデキるのになぜか部下全員から嫌われている…今年、相談件数が一気に増えた「新タイプのヤバい上司」
仕事はできるが、部下に対してはパワハラ気味な上司にどう対応すればいいか。ストレスマネジメント専門家の舟木彩乃さんは、「パワーハラスメントをしている上司が、発達障害やグレーゾーンではないかと疑う内容の相談が、今年に入ってから一気に増加しています」という――。 【この記事の画像を見る】 ※本稿は舟木彩乃『発達障害グレーゾーンの部下たち』(SB新書)の一部を再編集したものです。 ■「上司がグレーゾーンかも」と感じる部下たち 『発達障害グレーゾーンの部下たち』の企画段階では、グレーゾーンの部下への対応法をメインテーマとしていました。それは、筆者が受ける相談に、グレーゾーンの社員に対して、上司としてどう対応すれば良いか分からない、などと思い悩んでいるケースが多かったからです。 ですが、最近は「上司がグレーゾーンかもしれない」という相談も増えてきました。その多くは、パワーハラスメントをしている上司が、発達障害やグレーゾーンではないかと疑う内容です。このような相談は前々からありましたが、今年に入ってから一気に増加しています。 今年に入ってから行政機関や民間企業でのパワーハラスメントの話題が相当増えており、連日のようにメディアで取り上げられていることも、相談が増えたことに影響しているのかもしれません。 パワーハラスメントを働いている人には、議員や首長など選挙で選ばれた人も含まれています。公職にある権力者のパワーハラスメントは、当然マスコミの取り上げるところとなり、報道をきっかけに類似する案件などが、行政、民間を問わず噴出することになります。このようなハラスメントの背景には、実際に、上司の発達障害やグレーゾーンが関係していると思われることも多々あるのです。
■仕事の能力と部下の管理能力は別物 グレーゾーンの中には突出したスキルやアイディアを持っていたり、ずば抜けた集中力で結果を出してきたりした人たちがいます。それらの能力を活かせるような職場環境にいて、大きな成果をあげた結果、出世して部下を持つようになるケースも少なくありません。 しかし、仕事で素晴らしい業績を出すことと、部下への対応や管理能力は基本的には別物であるといえます。特に、グレーゾーンの特性が管理職としての仕事と相性が良くないこともあります。ここでも事例を紹介しながら、グレーゾーンの上司への対応方法について解説します。 グレーゾーンの上司への対応法を知ることは、次のような面でも役に立ちます。 ---------- ・グレーゾーンの自覚に乏しい上司について理解を深めることは、自分自身も他の人に似たようなことをしているかもしれないという気づきにつながる。 ・部下が困ったり、悩んだりしてしまう上司の言動はどのようなものなのか、具体的に分かる。 ・知識として対処法を知っていることで、困っている同僚や後輩の相談に乗ったり、然るべき人につないだりすることができる。 ・組織として早々に把握することで、セミナーの企画や然るべき部署への配置換えなどを検討することができる。 ---------- ■事例:ASD特性のグレーゾーンの上司 Sさん(男性40代)は、某メーカーのマーケティング部の管理職です。彼は、緻密なデータ分析を得意としており、自社製品の売り上げだけでなく、経理部門にも貢献してきました。また、異動などの際には、自身が蓄積してきたデータ分析の手法をマニュアル化するなどして、後任への引継業務も完璧にこなしてきました。このようなSさんのスキルや仕事ぶりを尊敬する社員がいる一方で、Sさんと一緒に仕事をしたことがある人たちからは、「完璧主義」や「彼はいったい何様?」という声があったのも事実です。