新型日産スカイラインNISMOはもはや工芸品である! 11年目を迎えたスポーツセダンが今なお魅力的だったワケとは
会話が成り立つクルマ
ワインディングロードでは、大人っぽいという印象がもう一歩前進して、玄人っぽいという印象に変わる。 はっきり言って、脳天に突き抜けるような快感を提供するハンドリングマシーンではない。けれども、ステアリングホイールを切ると、前と後ろがバランスよくロールして、きれいなコーナリングフォームで曲がっていることが実感できる。市街地で感じた洗練された乗り心地が、こうした場面でも変わりないことも特筆モノだ。 スカイラインNISMOで走っていて感心するのは、会話が成り立つクルマだということだ。アクセルペダルを踏むと、「もうちょっと踏み込むと、もっとイイ感じになるよ」というメッセージが伝わってくる。ブレーキペダルを踏むと、「ここで少し踏力を緩めようか」というアドバイスが返ってくる。ステアリングホイールを切り込むと、「もう一杯一杯だから、これ以上切ってもムダだよ」と、諭される。 なるほど、運転とはクルマとの対話なのだ、ということがひしひしと伝わってくる。そしてクルマの背後に、どなたかは存じませんが、念入りにチューニングを施した手練れの影が浮かび上がる。 1000台限定とはいえ工場のラインで製造しているから作品と呼ぶのは無理があるだろう。とはいえ、単なる工業製品ではなく、工芸品の趣がある。 スカイラインNISMOに乗っていると、「おもしろい! 楽しい!!」ではなく、「ずっと乗っていたい」と、感じる。 冒頭で、GT-RとフェアレディZに比べると影が薄いと書いたけれど、街でこのクルマを見かけたら、“わかっている人が乗っている”と、尊敬の眼差しを向けてしまうだろう。
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)