箱根駅伝で東洋大が5年ぶりの総合Vを果たす条件とは?
第95回箱根駅伝は3区終了時で5連覇を目指す青学大が首位に立った。前回2区区間賞の森田歩希(4年)が故障の影響で3区に入り、区間記録を12秒も更新する1時間1分26秒と快走。7人をごぼう抜きして、東洋大から8秒のリードを奪った。青学大にとっては、「ここまでは計算通り」(原晋監督)という展開だった。5~7区には前回好走した“最強メンバー”が揃っていただけに青学大の勝利が確実になったかと思われた。しかし、勝負の女神は微笑まない。 一方、打倒・青学大に燃える東洋大・酒井俊幸監督は、「1区西山の区間賞から始まり、東洋大としてはプラン通りの流れでした。青学大の3区森田選手の区間新記録は正直、参ったなと思ったんですけど、その後の相澤が区間新記録で流れを戻してくれた。東洋大としては理想の展開になりましたね」とレースを振り返る。青学大・森田と同じように故障の影響で花の2区を回避した相澤晃(3年)が4区で激走した。 青学大・岩見秀哉(2年)を2.6kmであっさり抜き去り、首位を独走。二宮(9.1km地点)でリードを1分01秒に拡大すると、終盤もペースを落とさなかった。区間記録(1時間2分21秒)を大きく塗り替える1時間0分54秒で走破。駒大・藤田敦史(現・駒大コーチ)が第75回大会(1999年)に旧コースで樹立した区間記録(1時間00分56秒)も上回り、青学大を一気に突き放した。 相澤は前回2区を森田と3秒差の1時間7分18秒(区間3位)で走っている選手。今季は日本選手権1万mで8位入賞を果たし、全日本大学駅伝の最終8区では区間賞も獲得している。箱根は2年連続の2区を予定していたが、11月下旬に左腓骨筋を痛めて、思うようなトレーニングができずに心身ともに苦しんだ。 「ポイント練習をすると翌日痛くなったので、別メニューでやってきました。チームエントリー(12月10日)のときは走れていなくて、自分がメンバーに入っていいのかという気持ちもあったんです。12月20日頃は、気持ち的に走りたくなくて……。周囲の選手に弱音を吐いたこともありました。でも、谷川嘉朗コーチから注意を受けて、自分が主力として走らなきゃいけないんだということを再確認して、気持ちを入れ替えて臨むことができたんです。12月31日のジョグと流しで、動いてきて、もしかしたら行けるんじゃないかという気持ちが出てきました」 当初は「1時間1分30秒」という目標タイムを立てていたが、青学大・森田の区間新に刺激を受けた。5kmを14分17秒、10kmを28分44秒で通過。予定以上のペースで突き進むと、終盤は藤田の旧区間記録を意識したという。 「スタートする前は遥か遠い記録かと思っていましたが、途中から自分が出すんだという気持ちで走りました。岩見選手も強いので1分開けばいいかなと思っていたんですけど、もっと離せると思って、最後は頑張りました」 東洋大は華麗なる“区間新返し”で、青学大から3分30秒という大量リードを奪うことに成功。5区田中龍誠(2年)は前年のタイムを1分24秒も短縮する1時間12分52秒(区間8位)でガッチリと首位を守り、往路V2のゴールに飛び込んだ。 東洋大は前年の往路Vメンバー5人を今回も初日に起用。出雲と全日本で不調だった1区西山和弥(2年)の2年連続区間賞で飛び出すと、2区は前回3区1位の山本修二(4年)が区間4位と好走。3区は前回4区2位の吉川洋次(2年)が故障あがりながら区間4位と踏ん張った。東洋大は前年の往路Vタイムを約2分短縮する5時間26分31秒の往路新記録を樹立。5人の1年間の成長がタイムにも表れていた。 「青学大はエントリー16人のレベルは高いんですけど、昨年の田村(和希/現・住友電工)君のように自分から攻めて行ける選手は少なかった。チャンスはそこしかないと思っていました。往路の1~4区は能力があります。我々は選手層が薄い分、上の強化をしてきた部分があるので、その差が出たのかなと思います」と酒井監督。主力を並べた1~4区の“直接対決”で青学大に勝ち越したのが大きかった。