「昔語り」「ミスを隠す」より嫌われる上司の言動"ワースト1”、これをされたら部下の事務処理能力は6割下がる
人・物・金の合理的な配分を追求する経済学の中でも異色の「行動経済学」がブームです。行動経済学のポイントは、「人は時に不合理な行動をとる」という前提に立っていること。つまり、コミュニケーションのすれ違い、長引くムダな会議、延々と続く説教……など職場に起きる問題は、メカニズムさえわかれば最適な解決法がわかるのです。 本稿では行動経済学の第一人者、青森大学の竹林正樹客員教授による『ビジネスパーソンのための使える行動経済学』から、部下に疎ましがられずに指導について一部抜粋してご紹介します。
■結局、上司は怖いほうがいいのか? 経営学では、「適度な緊張感が仕事に役立つ」とされてきた面があります(ヤーキーズ・ドットソンの法則:適度な緊張状態にある人が最適なパフォーマンスを発揮できる)。しかし、パワハラは別です。叱責を受けた人は、事務処理能力や創造力が約60%低下します。 高圧的な態度で相手を動かすことは、時には可能かもしれません。でも、不快感を覚えた相手は“リスク愛好性”が高まり、「どうにでもなれ!」といった言動になりやすいことがハーバード大学の研究で明らかになっています。
つまり、上司は部下のためを思って説教していると思っていても、相手が高圧的な態度に不快感があった場合、本人のためにも組織のためにもなっていないのです。 以前、ある組織で「どんな人がハラスメントで訴えられているのか?」を調査したところ、「ミスを隠す」「昔語りをする」などのような、いかにも嫌われそうな上司の言動があっても、最も訴えられていたのは「説教が長い人」でした。 指導した上司の側は、時間をかけてじっくりと丁寧に指導したと思っていたのに、された側は、「これは指導の域を超えている、嫌がらせだ」と感じてしまったようです。上司の方はよかれと思ってやっていたことですから、もったいないことですよね。この結果を受け、私は次のようなナッジを設計しました。