「昔語り」「ミスを隠す」より嫌われる上司の言動"ワースト1”、これをされたら部下の事務処理能力は6割下がる
私のアメリカ人の友人、T氏は、部下に指導するときは、いつもゆっくりとはっきりとした口調で話しています。それでも、2分で指導は完結します。 「そんなにゆっくり話していて大丈夫なの?」と聞いたところ、彼は「試行錯誤を重ね、このスピードが最も相手に伝わりやすいという結論になったんだ。ゆっくり話すことで、私は感情的になっていないという意思表示になり、相手の心の武装解除に繋がる」と答えました。彼のようにペースを変えて、相手に共感する姿勢を示す方法をペースナッジと呼びます。
このような姿勢はプロフェッショナリズムを感じさせます。「いいか、これが最後の機会だ! わかっているのか!」と大声で指導されるより、冷静に「これが最後の機会です。同じ過ちを繰り返さないようにしてください」と言われたほうが、行動を変えたいと思うものですよね。 ■「声を荒らげるのは年に3回まで」など決める また、パワハラをした人の多くは「相手の言動を正す必要があるから指導した」と言います。でも、正すのに大声を出したり不快な思いをさせたりする必要はありません。だったら、大声を出さない、と自分で決めてしまうのはいかがでしょう?
たとえば私は、他人を指導する場合でも、大声を出すことはあまりありません。その理由は「声を荒らげるのは年に3回まで」と決めて、それを周りに言っているからです(コミットメントナッジ)。 腹が立ったとしても、「ここで3回のうちの1回を使ってしまうのはもったいない。年末まで残しておくか」と自分のためにセーブしておきます。結果として、全く声を荒らげない年もあります。 人間なので腹を立てることは多々あります。でも、怒りの感情を行動に移すかどうかの選択権は、自分が持っています。
私は他人から厳しい言葉を言われるのが嫌です。そのため、私も他人のミスに対して厳しい言葉を使いません。すると、相手も私のミスに優しい言葉で接してくれるようになりました(返報性ナッジ)。 このように、行動経済学のナッジ理論を使えば、再現性のあるルールをつくって、組織を変えていくことができるのです。
⽵林 正樹 :⻘森⼤学客員教授