「合計特殊出生率」とは? 少子化が進む日本のこれからを大江麻理子さんと考える
◆「子どもや子どもを持つ家庭をサポートする空気の醸成が必要。社会全体で見守り育てていく」 アンケートには「キャリアと子育てが両立できる支援がもっとあれば」という要望も。 「子どもを産んだあとに自分のキャリアがどうなるのか、不安に思う人が多いと思います。出産後のキャリアの予見可能性がより高まる働き方ができるようになるといいですよね。最近では、男性も年単位で育児休暇を取るようになってきていて、『WBS』のスタッフにも1年間育休を取得している男性がいます。子を持った人みんなが育休を取ることになると、女性だけにキャリアの分断が起きず、子どもが生まれたらみんなでサポートしようという空気になってくると思います。そうなったときに残った人員に負荷がかかりすぎる問題も今起きていますから、男女ともに子育てに取り組む人が出てくることを踏まえたゆとりのある人員配置を企業が行うことも大切です」 子どもや子育て中の人に不満がいってしまうことになってはよくないと大江さん。 「子どもや子どもを持つ家庭が減ってきたこともあり、周りから『子どもの声が騒音だ』『子どもを乗せたベビーカーが迷惑だ』などと苦情を言われてしまう問題も起きていますよね。今、日本では『子どもはみんなで育てるもの』といった社会のコンセンサスが失われつつある気がします。この状態では子育てをしている人の肩身が狭くなってしまいますし、根本のところで出生率を上げられないのではないかと思います。子どもや子どもを持つ家庭をみんなでサポートし、暮らしやすい、生活しやすい、子育てしやすい、サポートする側も前向きになれる空気の醸成こそ、これから政府が力を入れて取り組むべきことではないでしょうか」 読者から「子どもを産まない選択も尊重した上で少子化対策はできますか」との声も。「子どもを産む当事者にならなくても、子どもを持つ人が育てやすいような環境をつくるという共通のミッションはあると思います。選んだライフプランによって役割に差はあるかもしれませんが、子どもを社会で育てていく、という課題にみんなで取り組むという姿勢が大切ですよね。子どもって国の宝ですし、社会全体で見守りながら育てていければいいなと思います」 【大江麻理子】 おおえ まりこ●テレビ東京報道局ニュースセンターキャスター。2001年入社。アナウンサーとして幅広い番組にて活躍後、’13年にニューヨーク支局に赴任。’14年春から『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のメインキャスターを務める。 撮影/花村克彦〈Ajoite〉 取材・原文/佐久間知子 ※BAILA2025年1月号掲載