認知症の母が〈有料老人ホーム〉に入居「これで安心」と思いきや…わずか1年たらずで「出ていってほしい」と言われた理由【安藤なつが介護ジャーナリストに聞く】
「施設に入居できれば安心」ではない
安藤:でも施設に入居してくれれば、その後は安心ですよね。 太田:そんなことは、ありません。住宅型の施設は要介護度が進むと退去を言い渡されることもあります。 安藤:え! 追い出されちゃうんですか。 太田:フルプランの介護型は、看とりまで行う施設が多いので「終の棲家」となりえるケースが多いです。しかしオプションプランの住宅型は、重い介護が必要な人には対応できない場合もありますから、将来的に住み替えの必要が生じる可能性も考えておいたほうがいいですね。 安藤:住宅型は介護サービスがオプションプランということは、たくさん使うようになったらお金がかかるってことですか? 太田:いいところに気がつきましたね。住宅型の場合、入居した当初は介護サービスの利用料が少ないので費用を抑えられます。でも、要介護度の進行に合わせてサービスを増やしていくと、フルプランの介護型施設と変わらないか、それ以上の費用がかかる可能性もあります。 安藤:ええ~っ! それは落とし穴ですね。 介護型のフルプランだと思ったら… 認知症の母親を有料老人ホームへ入居させ、これで安心と思っていたXさん。ところが1年もたたないうちに施設から「出ていってほしい」と退去を勧告されてしまいました。母親の認知症が進行し対応できないというのです。 改めて入居時の書類を確認したところ、その施設は「住宅型」の有料老人ホーム。母親の状態は、書かれている退去の要件に当てはまるのです。 有料老人ホームは介護付きだと思い込んでいたXさんは、再度、施設探しをすることになりました。 ■「退去」と言われる主な理由 1.日常的に医療行為が必要となったとき 2.他の入居者とのトラブルが増えたとき 3.体の変化によって施設での対応が難しくなったとき
最も人気が高い高齢者施設とは?
安藤:フルプラン=介護型と、オプションプラン=住宅型の施設があることはわかりましたが、具体的にはどんな施設があるんですか。 太田:主な施設をまとめたのが[図表3]です。人気が高いのは、フルプランの介護型で公的施設の特別養護老人ホームです。 安藤:いわゆる「特養」ですね。でも、人気が高くてどこの施設も何百人も待っている人がいると聞いたことがあります。 太田:かつては、そんな時代もありましたが、最近はそれほどではありません。ただ、要介護3以上という入居の要件があります。 安藤:介護型の民間施設の場合は、やっぱり費用が高くなりますか? 太田:都市部では入居一時金が高額な豪華施設もありますが、費用が高いからといって介護が手厚いとは限りません。民間の介護付き有料老人ホームの費用は立地条件や設備しだいなので、施設の特徴と希望する条件、予算を総合的に考えることがポイントです。 安藤:もう1つのグループホームってどういう施設ですか? 太田:認知症の高齢者が5~9人の少人数で共同生活を送りながら、介護を受ける施設です。家庭的な雰囲気の中で穏やかに過ごせるようにと考えられた施設で、NPO法人や医療法人、社会福祉法人などが運営している施設も多く、費用も比較的抑えられています。ただし入居には、施設と同じ市区町村に住民票があることなどの条件があります。 安藤:「サ高住」へ入居しているという話も、よく聞きます。 太田:正式名称は「サービス付き高齢者向け住宅」。必ず付いているサービスは安否確認と生活相談のみで、本来は施設ではなく住宅なんです。夜間はスタッフが常駐しないところもあります。 安藤:サ高住も住宅型有料老人ホームも、オプションタイプの住宅型だから介護サービスは別契約なんですよね、何が違うんですか? 太田:いい質問です! 確かに、この違いはわかりにくいです。結局は、それぞれの施設ごとに行うケアの内容は異なります。ですから、見学が欠かせないんです。 安藤:それに、サ高住にも「特定施設」指定があるところもあります。指定を取っている施設なら、フルプランの介護型と同様のサービスを受けられるので、施設ごとに確認してください。 安藤 なつ メイプル超合金 ヘルパー2級(介護職員初任者研修) 太田 差惠子 介護・暮らしジャーナリスト
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