【MM Another Story:ランボルギーニ レヴエルトの二面性を愉しむ】サーキットで披露した「猛牛の新境地」。一般公道で明かされた「猛牛のシン境地」
オーバーステアから盛り上がるファイティングブル魂
言いそびれていたが、試乗当日の富士スピードウェイは午前中が強い雨で、その後、雨は上がったものの、昼過ぎに走行を開始した時点ではコースの一部がまだ湿った状態。それでも、ストラーダのまま先導車のペースに合わせて走る限り、レヴエルトが凶暴な振る舞いを示すことはなかった。 多少、乱暴にアクセルペダルを踏み込んでもエンジン出力は適切に絞り込まれるので、後輪はしっかりと路面を捉えたまま走行ラインから微動だにしない。危なげない走りとは、まさにこのことだ。 「ストラーダ」モードが生み出す安心感をじっくり確認したところで、これとは正反対の「スポルト」モードに切り替える。ランボルギーニファンであれば先刻ご承知のとおり、スポルトは積極的にオーバーステアを許容する、ファン・トゥ・ドライブを満喫するためのモード。 ところが、高速コーナーの100Rでもレヴエルトは優れたスタビリティを発揮し、狙ったラインを正確にトレースしてくれる。後輪がスライドする予兆は、まったく感じ取れなかった。 しかし、大きく曲がり込むコーナーが連続する第3セクターに入ったところでやや強めのブレーキングからハンドルを切り込むと、かすかにリアタイヤの接地性が薄れたような感触が伝わってきた。ここでタイミングよくアクセルペダルを踏み込めば、レヴエルトは豪快なテールスライドを披露。 アクセルペダルを踏み込む右足の力を加減しながらカウンターステアをあてれば、文字どおりファイティングブルの名に相応しいオーバーステアの姿勢を保ったままコーナーを立ち上がった後、スムーズに後輪のグリップを回復し、次のコーナーに向けて突進し始めたのである。 その、コーナーの進入から脱出まで、すべて滑らかな挙動に終始するテールスライドを引き出せたことに多くのドライバーは深い満足感を味わうだろうが、ドライバーの力量だけですべてがコントロールされていたわけではないことは理解している。 実は、ドライビングダイナミクスを司るランボルギーニ独自のANIMAが、可変ダンパー/4WDのトルク配分/ブレーキ トルクベクタリングなどを緻密に制御することで、ドライバーに気づかれないようにテールスライドを引き出すとともに、その後も安定したオーバーステアの姿勢を保つよう、すべてのパラメーターを的確にコントロールしているのである。