「俺が行くわ」ジェフ千葉、品田愛斗の自信が導いた“J1食い”。「自分だけは常に…」喜びをグッと抑え込んだ理由【コラム】
⚫️「俺が行くわ」ためらいはなかった
品田は「(札幌は)チームとしてマンツーマンというか、“人”への意識が強いので、空けちゃいけないところを空けるシーンが多いなと感じていました。特に押し込まれた時間帯では自分が周りに声をかけました」と言う。 札幌はピッチ全体を広げようとするも、コンパクトかつタフな戦いで挑む千葉がそれを阻み、札幌のプレス時に生まれるスペースを見逃さず、ショートカウンターで押し返すと19分、風間宏矢が右サイドに展開し岡庭愁人がアーリークロスを送る。ペナルティーエリア手前にポジションを取っていた小森がヘディングシュートでゴールマウスを狙ったが、これは相手キーパーのファインセーブに遭った。 25分にはドゥドゥのクロスに岡庭が頭で合わせるも防がれ、続く29分には小森のシュートのこぼれ球をドゥドゥが押し込むがゴールライン手前で札幌ディフェンダーにクリアされてしまう。 好機を作ることで千葉にリズムが生まれる中、スコアを動かしたのはそのホームチームだった。45分、ゴール前約25メートルの位置で得たフリーキックを品田が右足を振り抜く。鋭い弧を描いたボールはゴール右上隅に突き刺さった。 ボールセット時には左利きの佐々木翔悟と並んだが、札幌の壁の位置を確認し「俺が行くわ」と品田が蹴る。これまでの人生の中で何回、何百回、何千回、何万回と体現してきたものだからためらいはない。 「練習でもあのくらいの距離の感触がかなり良かったので、集中して自分の形で蹴ることだけ意識していました」と口にすると、喜びの感情とほっとした思いが混じり合う中で「ゴラッソだったので気持ち良かった」と熱い思いをガッツポーズで示した。
⚫️「自分だけは常に落ち着いていたい」
今シーズン、FC東京から期限付き移籍し、ここまではリーグ戦14試合に出場。主戦場となるボランチのポジションには田口泰士や小林祐介、そしてエドゥアルドら多士済々なメンバーが並び、激しい競争に身を置く中で、「個人の結果として評価につながる部分もあるので、それはそれでいいこと」と目に見える形で結果を残したことで今後につなげていく構えだ。 その中で指揮官は次のように品田を称えた。 「彼の特長はトレーニングから表現できていましたし、一番の特長としてはゲームを動かす能力だと思います。流れをうまく読みながら攻守ともに判断できるし、運動量もある。今日のような“一発”もあるので、僕としては毎回メンバーを決めるたびに迷っている選手であることは間違いありません」 ビハインドを背負った札幌は後半に交代のカードを切りフレッシュな選手を投入。押し返す時間が増える。しかし千葉はクロスボールに対してファーストバトルでは相手と競り合い、セカンドボールに対しては確実にクリア。全員が体を張って我慢の時間を耐える。 両チームが次の1点を求める中、80分、途中出場の高木俊幸がスルーパスに反応しキーパーと1対1の状況を迎えたが、トラップが大きくなり阻まれた。アディショナルタイム8分が提示され、札幌がパワープレーを中心に押し込むも千葉は最後まで集中力を切らさずシャットアウト勝利。公式戦5試合ぶりの勝利と天皇杯ベスト8入りを決め、前回のFC東京に続きJ1勢を2度食ってみせた。 これまで上手く行かない時間帯に勝手に崩れるなど脆さもあったが「僕自身は全体を俯瞰して見れていると思うので、どの時間帯でもコントロールしたかったし、自分だけは常に落ち着いていたいと思っていました。真ん中にそういう選手がいることによって、今日は安定感のあるゲーム運びができたんじゃないかと思います」と品田は充実感を滲ませた。