「高捜庁ではなく“空捜庁”」 「次失敗したら廃止」 なかなか尹大統領を逮捕できない韓国捜査当局に世間から「無能」と批判が殺到
野党からは、一次の拘束令状の執行に失敗した高捜庁をなくすべきだという声も上がっている。野党議員はその背景を「李代表は公職選挙法の二審の宣告前に次期大統領選挙をしたいという立場で高捜庁の空回りに焦っている。(前任の)文在寅系が作った機関ですから、高捜庁の失敗を李在明系は責任がとれないというわけです」(中央日報、1月8日)と話している。派閥の違う文在寅系の失敗の責任を李在明系は負えないというわけだ。
■「空捜庁」と揶揄されるほど成果がない 高捜庁は2021年、検察改革を掲げた文在寅前大統領(共に民主党)の悲願のもと発足した。大統領を含む、高位公職者の主に汚職に関する捜査を担い、検察の力を削ぐ目的で設立されたが、「空捜庁」と揶揄されるほど、これといった実績をあげられていない。 こうした中、昨年12月14日、尹錫悦大統領が弾劾訴追されると、各捜査当局は自身のメンツと存在感をかけて大統領の内乱罪における捜査合戦を繰り広げた。捜査を迅速に行うために、高捜庁と警察庁、国防部は共同の捜査本部を設けたが、庁の存在をみせる千載一遇のチャンスと高捜庁が捜査の前面に出た。
しかし、最初からつまずいた。 尹大統領側は捜査に応じない理由として挙げるように、高捜庁には内乱罪の捜査権がない。高捜庁法には捜査できる犯罪項目が定められているが、内乱罪は該当しないのだ。この点について今も論争が続いているが、同庁は法の解釈が異なると反駁している。 また、拘束令状を発布したのも、高捜庁の捜査の管轄ではないソウル西部地裁だった。そのうえ、令状に「刑事訴訟法110条(軍事上の秘密と押収)と111条(公務上の秘密と押収)の適用を例外とする」として、物議を醸した。管轄外の裁判所に拘束令状を請求したのは、発布してくれる裁判官を探し歩いたのではないかと批判され、「裁判官ショッピング」と皮肉られた。
尹大統領の弁護代理人は8日の記者会見で。大統領が高捜庁の二次拘束令状の執行には応じない理由をこう説明している。 「(高捜庁の)無効である拘束令状には応じられない。まず起訴をするか、事前拘束令状を請求するならば裁判に応じる。捜査の管轄であるソウル中央地裁が発布した令状であれば応じる」 尹大統領側は、ソウル西部地裁発布の拘束令状について憲法裁判所に権限争議審判と効力の停止を求める仮処分を出していることも明らかにしている。