巣箱をもっとも利用する野鳥・シジュウカラの子育て【公園の巣箱で野鳥観察】
巣箱をかけて分かること
私たちの身の回りで巣箱を利用する野鳥はシジュウカラのほかにヤマガラやスズメ、ムクドリなどがいます。フクロウも巣箱で繁殖することが知られています。共通するのは、樹洞(木の幹にできた穴)を利用する野鳥だということです。シジュウカラはひっくり返して庭などに放置された植木鉢や錆びて穴ができた街灯の柱などでも繁殖します。 子育て中のシジュウカラは1日に何十匹もの昆虫類を巣箱に運び込みます。シジュウカラひと番(つがい)が繁殖を含めた1年間で蛾の幼虫を約290万匹捕食したデータもあるそうです(※)。タンパク質が豊富な幼虫が、育ち盛りの雛の成長を助けるのです。 普段はなかなか窺い知ることのない野鳥の子育て。その様子を間近に見せてくれる巣箱は、私たちのすぐそばにある大自然の多様な営みに気づかせてくれます。そしてまた、私たちの身の回りには巣箱を利用しない野鳥もたくさん生息しています。ツバメは人家や駅の軒先などに泥と枯草を混ぜて巣を作りますし、エナガはコケとクモの糸などを使ってソメイヨシノの幹の股などにボール状の巣を作ります。 巣箱を利用する野鳥、利用しない野鳥、それぞれに懸命に生きる命のドラマがあるのです。そして、巣箱は子育てに樹洞を利用する野鳥の繁殖を助けます。 長池公園の別の巣箱には、すぐに別のシジュウカラの番が「入居」し、ほかのもう一つの巣箱でも7個のシジュウカラの産卵が確認されたようです。 愛らしくも逞しく生きる野鳥たちの姿を観に、巣箱が設置された初夏の身近な公園に出かけてみませんか。 ※出典/『巣箱作りから自然保護へ』(飯田知彦・著/創森社) 文・写真/中村雅和 幼少期から生き物や鉄道に親しむ。プロラボ、住宅地図会社の営業マン、編集プロダクション、バス運転士、自然保護団体職員などを経てフリーの編集者に。
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