【MotoGPライダーの足跡】中上貴晶選手、9歳の転機。「カートは危ないから、2輪がいい」
「もし、レーシングライダーになっていなかったら?」
最後に、「もし、レーシングライダーになっていなかったら?」と尋ねました。 中上選手は「バイクで走ることしかしてこなかったから、昔は考えられなかったんですよね……。環境的にほかの職業を知る機会も見る機会もなかったから、答えるのが難しかった。今でも難しいですけど……」と、しばし悩みます。
脇目もふらず、レースのために全てを懸けてきた、そして今も生活のほとんどをレースのために費やすレーシングライダーだからこそ、「もしも」だとしても難しい質問なのでしょう。苦笑いをしながら考え込む中上選手を見て、そう感じました。 中上選手は悩みながらも、こう答えてくれました。 「ここ4、5年はテニスが好きです。テニスも厳しい世界ではありますけど、スポーツが好きなので、テニスプレイヤーは、唯一、候補として挙げられるかな……。メカニックはだめ。プラモデルも作れないんですよ!」 「あとは、4輪ドライバーも興味ありますね。今は年に一度、オフシーズン中、時間があるときに遊びでカートに乗っているんです。パソコンとかはだめ。体を動かす方が好きです。人生でいろいろ経験していったものが、つながっているのかもしれないですね」 9歳の決断から、23年。その道は「MotoGPライダー」につながっていました。 ■中上貴晶(なかがみ たかあき)選手/イデミツ・ホンダLCR/#30 1992年2月9日生まれ 2004年(12歳):ロードレースデビュー 2006年(14歳):全日本ロードレース選手権GP125クラスで全戦優勝。最年少チャンピオンを獲得 2007年(15歳):CEV Bucklerに参戦。また、MotoGP125ccクラス最終戦バレンシアGPに参戦 2008年(16歳):MotoGP125ccクラスにフル参戦 2009年(17歳):MotoGP125ccクラスにフル参戦 2010年(18歳):全日本ロードレース選手権ST600クラスに参戦。 2011年(19歳):全日本ロードレース選手権J-GP2クラスに参戦。チャンピオン獲得 2012年(20歳):Moto2クラスにフル参戦 2018年(26歳):MotoGPクラスにステップアップ 2021年(29歳):アラゴンGPで、日本人ライダーでは最多のロードレース世界選手権として通算200戦出走を達成
伊藤英里