「意外とガチでやってます」国税局が主催する日本酒コンテストは想像以上に熱い戦いだった 全国の酒蔵が技術の粋を競う鑑評会、車で例えるなら「F1の世界」!?
新型コロナウイルス禍での行動制限が解除されてから初めての年末を迎える。久々の忘年会や、年末年始のお供に欠かせないお酒といえばやっぱり日本酒。その出来栄えを審査するコンテスト「鑑評会」を各地の国税局が開いているのはご存じだろうか。年に1度、酒蔵が持つ技術の粋を集めて競う、静かで熱い戦いをリポートする。(共同通信=助川尭史) 【写真】人気日本酒「獺祭」の米国版が登場、会長の評価はまさかの「辛口」
▽まるで化学の実験?白衣姿で黙々と審査 10月上旬、関東信越国税局の鑑評会の審査会場には一合サイズの蛇の目のおちょこがずらりと並び、アルコールの甘い香りが部屋いっぱいに広がっていた。管内の6県から出品されたのは、全国最多の379点。2日間に渡る予選を経て選ばれた165点が、この日審査される。 国税局と管内各県の技術指導者から選ばれた評価員は白衣を着込み、おちょこからスポイトでとった日本酒を手持ちのプラスチックコップに注いで、鼻を近づけたり口の中で空気を含ませながら転がしたりしてわずかな味や香りの違いを見極める。静かに、淡々と進む光景はまるで化学の実験かのようだ。 「役所がやっている審査だと何か忖度があるかのように思われるかもしれないが、評価員に与えられる情報は目の前の酒だけ。意外とガチでやってるんです」。鑑評会を取り仕切る菅原博栄酒類監理官は笑って話した。 関東信越国税局の管内には、酒蔵の数が全国1位の新潟、2位の長野に加え、実は全国4位の日本酒生産量を誇る埼玉がある。ほかにも近年民間のコンクールなどで評価の高い群馬、栃木、茨城の北関東3県を抱える激戦区。審査は毎年独特の緊張感が漂うという。
▽1日で100点審査、打ち上げはまさかのビール? では、評価員はどのような基準で出品された日本酒を評価しているのだろうか。国内唯一の酒の研究機関「酒類総合研究所」(広島県東広島市)に出向経験もある関東信越国税局の荒川晃大実査官に審査過程を解説してもらった。 まず、出品された日本酒は製法や酒米の精米歩合ごとに「吟醸酒」「純米吟醸酒」「純米酒」の3部門に分かれて審査される。まず見られるのが「外観」。醸造の際に使う器具の金属の色や、ろ過時の炭残りがないかが評価のポイントだ。 続いてチェックされるのは「香り」。メロンやバナナに例えられる吟醸香やキャラメルのような熟成香などの日本酒独特の香りだけでなく、製造や保存の過程で生じるカビ臭やゴム臭などの好ましくないにおいがあった場合は減点対象になる。 そして最後は甘みや濃淡といった「味」を感じ取った上で、5段階で総合評価する。各審査員の評点を元に「優秀賞」を選び、この中からトップの「最優秀賞」、次点の「特別賞」と順位付けが行われる仕組みだ。