「限界はない」マルディーニ家はイタリア代表と共に生き続ける。ダニエルに託された3世代の夢と壮大なロマン【コラム】
サッカー界には3世代にわたって歴史を築き上げている一家が存在する。それが「マルディーニ家」だ。現在セリエAのモンツァに所属するダニエル・マルディーニは、父にパオロ、祖父にチェーザレを持つ。そんなカルチョ界のレジェンドである2人の血を継ぐサラブレッドが、ついにイタリア代表デビューを飾った。(文:佐藤徳和)
⚫️ダニエル・マルディーニという男の正体
マルディーニ家。その名は、サッカー界に燦然と輝く、威光に満ちたラストネームだ。チェーザレ、パオロ、そして、ダニエルと三世代に渡りミランのトップチームにその名を刻んだだけでなく、三世代がイタリア代表の一員として出場する金字塔を打ち立てた。 偉大な祖父と父を持っていたことから、周囲やメディア、サポーターの期待は、ダニエルの成長と共に膨れ上がっていったが、10月11日に23歳の誕生日を迎えた若者は、計り知れないプレッシャーにも打ち勝った。こうして、マルディーニ家は自動車のアニェッリやフェラーリ、ファッションのグッチのような名門となったといっても過言ではないだろう。 「我々は常に洗練されたテクニックを追い求めており、ダニエルは私たちに不足していた選手である。クオリティーが高く、うっとりさせるようなプレーをし、相手からの激しい接触にも耐えることができるフィジカルの強さも持つ。脚力もあり、相手を背負ってのプレーも可能とするプレーヤーだ」とダニエルの特徴を述べるのは、代表招集を決意したイタリア代表指揮官のルチャーノ・スパレッティだ。 「素晴らしい成長を見せている。この1週間のトレーニングが、彼にどのような効果があるのか見てみようじゃないか。もしかすると、アッズーリの中で芸術的なプレーが爆発するかもしれないし、イタリア代表でプレーすることで、より継続的に結果を残せるように掻き立てるかもしれない。彼には大きな可能性がある」と話し、高く評価していることを明かしていた。
⚫️デビュー戦で見せた圧巻のプレーとは?
10月10日にローマのスタディオ・オリンピコで行われたネーションズリーグ・グループA2の第3戦、ベルギー代表戦では出場機会こそ得られなかったものの、試合前にはベンチからメンバーと共にイタリア国歌を熱唱した。 胸を打つシーンは、14日の同第4戦、スタディオ・フリウリで行われたイスラエル代表戦で訪れた。3-1でイタリアがリードしていた74分、ジャコモ・ラスパドーリに代わってピッチに立つ。このウディネーゼの地は、奇しくも父パオロが1985年1月20日に16歳でミランの一員としてプロデビューを飾った場所でもある。そのパオロと、母アドリアーナ、そして5歳年上の兄で昨年現役引退を決断したクリスティアンがスタンドから見守る中、11番を背負い堂々のアッズーリ・デビューを果たした。 78分には、サンドロ・トナーリとのパス交換で左サイドを駆け上がると、敵陣深くで、相手の股下を通すパスを、小さなスペースに走り込んだデスティニー・ウドジェに送る。この瞬間、後方にいたトナーリが、頭上で拍手をするほどの技ありのパスだった。 ウドジェのクロスのこぼれ球を、この試合で主将を務めたジョバンニ・ディ・ロレンツォが右足でシュートを突き刺し追加点。デビューからわずか4分で、4点目の起点となる仕事を成し遂げた。 4-1での勝利に短い時間ながら貢献したダニエルは試合後にRaiのインタビューに答え「とても興奮している。このデビューを家族、友人たち、そして、自分を愛してくれている人たちに捧げる」と笑みをこぼして述べると、「僕らはよく耐えて、この試合を自分たちのものにすることができた。代表チームに何をもたらしたいかって? クオリティーを少しでももたらしたいけど、このチームにはすでに十分なぐらいある。ただ、自分の役割を果たせるように努力したい」と代表での今後の豊富を語った。 そして、父のパオロは、「私のプロとしてのキャリアはここウディネで始まった。ここに戻ってこれて、とても嬉しく思う。父親としてこのような興奮を体験できるのは、自分がプレーしていた頃の興奮よりもとても大きなものだ」と息子の代表デビューに心を強く揺さぶられたことを明かした。