「限界はない」マルディーニ家はイタリア代表と共に生き続ける。ダニエルに託された3世代の夢と壮大なロマン【コラム】
⚫️「他の選手とは違った…」ダニエルのプレースタイル
激しく、深く、フェアで、そして美しいスライディングには、多くのものが魅了された。時折見せる機を見てのオーバーラップからのクロスといった一連の流れも華麗な動きだった。もはや、世界最高の左SBの称号は彼のものでしかない。 イタリア代表でも19歳でデビューして以降、126試合に出場。ブッフォン、ファビオ・カンナバーロに次ぐ、歴代3位を誇る記録だ。ただ、残念ながらタイトル獲得にはあと一歩及ばず、1994年W杯、UEFAユーロ2000(EURO2000)では共に決勝戦で涙を呑んだ。 2009年に現役引退を表明しているが、代表のユニフォームに別れを告げたのはそれよりも7年も早い、2002年W杯・ベスト16の韓国代表戦に敗れたあとだった。 そして、三世代目のダニエルが歩む道は、祖父や父とは違い、いささか険しいもののように見える。偉大すぎる祖父と父の存在によって、周囲の好奇の目にさらされてきた。しかし、ダニエルのあどけなく人懐っこい笑顔は、そういった苦労を感じさせないものだ。 エリートの一家で育ってきたような、手が届かないような威圧感は全く感じられず、どこにでもいる青年のように見える。ダニエルのプレースタイルについては、ミランのレジェンドの一人で、ダニエルの指導に携わったフィリッポ・ガッリがこう評する。 「多くのポジションをカバーできる。トレクアルティスタ(トップ下)や、シャドーストライカー、インサイドハーフといったポジションだ。いろいろな得点パターンを持ち、あらゆるプレーの状況に適応できる」とマルチな才能を持っていると強調する。 さらに「他の選手とは違った見方でサッカーを見ている。意外性のあるプレーを出せる能力には驚かされた」と言及。サッカー選手に最も必要な才能、イマジネーションを擁しているということだ。
⚫️現実的になってきたマルディーニ家の壮大なロマン
9歳でミランの下部組織に入団したダニエルは、2020年2月2日のベローナ戦でサム・カスティジェホに代わってデビューを飾り、親子三代に渡ってミランでの出場を果たすが、これは彼にとって通過点でしかなかった。 2021年1月6日のユベントス戦では、マルディーニ家によるセリエA通算1000試合出場という大記録を打ち立てる。チェーザレが347試合、パオロが647試合、そして、ダニエルが6試合出場し、3人の合計試合数が1000試合に達したのだ。 2021年9月15日には、リバプール戦でCLデビューを実現。当然ながらこれも親子三代の記録だ。その10日後、ミランでの初得点をスペツィア戦でマークし、ミランの19度目のスクデット獲得に少なからず貢献した。 そうして、22/23シーズンはプロとして初得点を挙げた相手のスペツィアへ期限付き移籍。22年11月5日にはミランを相手にゴールも奪った。ミランからの得点はマルディーニ家にとって初の記録だ。 2023年1月には活躍の場をエンポリに移した。その1年後には、パオロと旧知のアドリアーノ・ガッリアーニが副会長代行を務め、そして、ミランの黄金期を築き上げた故シルビオ・ベルルスコーニの弟、パオロが会長を担うモンツァへと期限付き移籍する。 昨季はリーグ戦11試合で4ゴールの実績を残し、ミランでの復帰が待ち望まれたが、7月31日、モンツァへの完全移籍が発表される。2026年6月30日までの契約で、さらに1年の契約延長オプションが付く。父パオロのミラン時代の戦友で、ダニエルも子どもの頃から知っているアレッサンドロ・ネスタが指揮を執るチームだ。 そのネスタは、「ダニエル自身もまだ自分の潜在能力に気づいていない。彼は驚くべき力を備えているが、試合の運びの面では改善の余地がある。もしその鍵を見つけることができれば、彼に限界はない」と評している。 今季は7試合に出場し1ゴールを挙げているが、目立つのはドリブルで仕掛ける数だ。今季はこれまで、ミランのラファエウ・レオン(16回)、フィオレンティーナのドド(14回)に次ぐ3位の13回を記録している。 そして10月8日、イタリア代表のスパレッティ監督から代表初招集の知らせを受けることとなり、冒頭で記述したように、マルディーニ家三代目として華々しく代表デビューを飾った。 ダニエルと、そして名家マルディーニの次なる夢は、3世代連続となるW杯出場だ。今回の代表招集により、2026年W杯出場への実現はより一層高まった。マルディーニ家の壮大なロマンは、朽ちることなく永遠に続いていく。 (文:佐藤徳和)
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