500台限定のSTI特別仕様車「WRX S4 STI Sport♯」、フレキシブル系パーツなどをがっつり盛り込んだWRX S4と乗り比べ
■ 快適性とスポーツ性を両立する「WRX S4 STI Sport♯」 ワークスチューニング合同試乗会において、2024年初頭の東京オートサロンで発表された「WRX S4 STI Sport #」に試乗することを許された。実はこのクルマ、限定500台というかなりレアな存在であり、すでに完売しているという代物で、パーツ単体では販売されることのないSTI フレキシブルパフォーマンスホイールやフレキシブルドロータワーバーといったかなりマニアックなパーツが奢られているところがポイント。インテリアやエクステリアに関しても標準車にはないものをさり気なく散りばめているあたりも興味深い。まずはその内容を振り返ってみる。 【画像】すでに完売済みのアナウンスがされている特別仕様車「WRX S4 STI Sport♯」(623万7000円)。水平対向4気筒DOHC 2.4リッター直噴ターボを搭載する「WRX S4 STI Sport R EX」をベースにSTIパフォーマンスパーツをはじめとする特別装備を採用し、専用チューニングを施した500台限定モデル STI フレキシブルパフォーマンスホイールは、ニュルブルクリンク24時間レースにおいて先行開発してきた技術を取り込んだものだ。ステアリングを操舵した瞬間の応答性にこだわったというこのホイールは、タイヤをたわませ接地面積を増やすことを目的としており、前後が異なるリム形状&高さを採用。リム幅については前後ともに同様となっている。前輪については旋回内側の接地面積増加を、後輪については旋回外輪のタイヤ変形抑制を狙っている。STIではかねてよりフレキシブルタワーバーやフレキシブルドロースティフナーによって内輪接地の重要性を追求してきたが、それがホイールにも波及したというわけだ。 専用のフレキシブルドロータワーバーは、ストラットタワー間のピロボールによる支持に加え、そこに与えたスプリングにプリロードを付加することで、さらなる微少操舵応答性を追求している。 走らせてみると、たしかにわずかにステアリングを切ったところからクルマ全体が応答を始め、大舵角応答まで一定した反応を見せてくれる。不感帯がなく、突然ゲインが立ち上がるようなことがないところがかなり好感触だ。 そこからアクセルを入れていくと、きちんと縦にトラクションがかかり、これこそが前後のバランスにこだわったホイールなのかと感心できるものがあった。前後ともに一定したグリップバランスが得られるため、ドライバーはやじろべえの中心にいるかの如く姿勢を動かしやすく、どのような姿勢にでも持ち込める感覚がある。 一方で、一般道走行をしてみても、外乱に強く、どんな入力があってもブレずに突き進んでくれるような“いなし”があるのだ。快適性とスポーツ性を足を変えずに変化させているところがなかなかおもしろい1台だ。 ■ 「WRX S4 STI Sport R EX」にSTIパーツをふんだんに使用 とはいえ、相手は限定車。すでに買えないのでは意味がない。そこでSTIは基準車に同様の考えを与えたフレキシブル系パーツをすべて盛り込み、さらにエアロパーツで武装したもう1台のWRX S4 STI Sport R EXのデモカーを準備していた。いま買える全てがここにある。果たして「WRX S4 STI Sport #」との差はどこにあるのか? 走らせれば相変わらずの“いなし”と“スポーツ”のバランスがある。ステアリングの初期応答に関しては「WRX S4 STI Sport #」ほどではないが、ノーマルと比べてしまえば切りはじめの応答はしっかりとありつつ、蹴り出しのトラクションもこれ単体で乗れば十分。クセのないハンドリングと、荒れた路面でも真っ直ぐに突き進む感覚に溢れており、これはこれでわるくない。 ただ、いいものを知ってしまうともの足りなさが出てくることも事実。限定モデルだけの専用品と言わず、もっと多くのユーザーに「WRX S4 STI Sport #」が行なったよさを広めてもらえたらと思わずにはいられない。今後の商品展開の拡大に期待したい。
Car Watch,橋本洋平,Photo:高橋 学,Photo:安田 剛