スバル・クロストレック 詳細データテスト 手頃なサイズに優れた悪路走破性 パワー不足は否めない
内装 ★★★★★★★☆☆☆
外装でも触れたように、キャビンも快適性や洗練度を高める細部の改良が数多く実施された。ドライビングポジションを最適化するためには、ドライバー周りの空間を数cm単位で拡大。シートの設計も巧妙になり、サポート性向上だけでなく、ヘッドトスの軽減も図られた。 着座位置はやや高めだが、とくにSUV的というわけではない。前席のレッグルームは広く、ヘッドルームもまずまず。ウインドウの面積が大きく、ピラーの太さが控えめなので、全方位とも視認性は上々だ。 室内の雰囲気はいかにもスバル車だが、このクラスのハッチバックと大きく違うのは実体スイッチが少ないこと。とはいえ、エアコンやシートヒーター、ミラー調整やトリップコンピューターといった、頻繁に使う機能は扱いやすいので、これは実用的なアプローチだと言える。 やや古臭く感じるのは、アナログメーターと、11.6インチディスプレイに用いられたグラフィックや90年代風フォントのせいだろう。しかし、もろもろ省略してデジタル化を進めた他社の最新デザインより、このほうがずっと受け入れやすいのもまた事実だ。 マテリアルのクオリティはおおむね立派なものだが、グレーのパーツに仕上げでリッチさを加え、硬くてプレーンなプラスティックより立派に見せようとした試みが成功しているとは言い難い。少なくとも、プレミアム感は見出せないだろう。 後席はなかなかの広さだ。われわれの計測法では、レッグルームはフォルクスワーゲン・ゴルフの8代目を40mm上回る。ただし、ヘッドルームはわずかながらゴルフVIIIに届かない。 荷室の前後長と幅は、このクラスのハッチバックの水準を超えるのだが、深さがやや足りない。これはハイブリッドシステムにより、床下の収納スペースが占拠されているせいだ。
走り ★★★★★★☆☆☆☆
加速性能の公称値は0-100km/h=10.8秒、実測値は0-97km/h=10.4秒。いずれにしても、エネルギッシュなパフォーマンスを感じさせるものではない。3万5000ポンド(約665万円)級のハッチバックの水準より2~3割遅いのはともかく、それ以外にも遅く感じることがあるのはトランスミッションの機能の仕方による。オフロード走行が多いなら、それも許せるだろうが。 CVTには、オンロードでの洗練性やドライバーが感じる一体感、全般的なドライバビリティに関して、主観的には改善を期待したいところもあるが、オフロードでの機能面は上々だ。 データを見れば、ミラクルが起きるようなメカニズムでないことは明らかだ。元気に走らせようとすると、このクロストレックはややアンダーパワー気味に感じる。とくに、トランスミッションのマニュアルモードを使うとそうだ。中間ギア比の低めなほうはあまりないくらい高めの設定で、駆動系はそこそこ太い中回転域トルクを受け止めつつも、それほど速さを発揮してはくれない。 マニュアルモードの3速で計測した80-113km/h加速は8.4秒で、4.3秒だったゴルフ1.5eTSIの倍近いが、固定ギア比での加速というのは、このトランスミッションの想定する使い方ではないことを勘案するべきだ。Dレンジでは、1~2速相当のギア比でやや回転が高くなりすぎるものの、3速相当程度から上なら80km/h以上で普通に走らせていれば、性能テストから予想するほど遅いということはない。 日常的な2点間移動であれば、クロストレックの走りはなかなかのものだ。ただし、かつてのスバルのボクサー4ほど速さやスポーティさで勝負するわけではなく、個性が強いわけでもない。経済性も特筆するほどではない。ハイブリッドの恩恵はさほど大きくはない。 電動機械式のブレーキサーボはちょっとクセがあり、クルマが冷えているとペダル操作に対して効きすぎる。しかし、温まってくると改善し、履いているタイヤのわりにはなかなかの制動距離を実現する。