スバル・クロストレック 詳細データテスト 手頃なサイズに優れた悪路走破性 パワー不足は否めない
はじめに
25年前、どれほどのスバリストが、今回のテスト車のようなクルマがスバルの稼ぎ頭になると予想しただろうか。欧州では、2012年の発売からこれまで、2世代にわたりXVとして販売されたが、昨年はスバルの新車販売台数の約40%を占めた。そして、モデルチェンジを機に、車名を北米などで用いられていたクロストレックに統一した。 【写真】写真で見るスバル・クロストレックとライバル (15枚) 2010年代終盤の短期間だけラインナップに復帰したインプレッサと同じプラットフォームを用いるクロストレックは、それに代わり英国市場におけるスバルの新たなエントリーモデルとなった。パワートレインは水平対向4気筒ハイブリッドで、クラッチ式のシンメトリカル4WDを組み合わせる。 スバルがこれほど他社と差別化を明確にした例はないかもしれない。普通のハッチバックをゴツく仕上げ、地上高を十分に確保し、オフロード走行に適したシャシーとドライブトレインを備えている。 それを売ろうとしているマーケットは、大型SUVを購入してもオンロードしか走らないようなユーザーが大多数だ。しかし、オフローダーにサイズやスペースより悪路走行面の機能性を求めるひとびともいるだろう。そうした少数派のために、この手頃なサイズの四駆を詳細に検分していこうと思う。
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
XVと呼ばれた世代も含めて3世代目となる現行クロストレックは、6代目インプレッサの派生モデルで、2022年末に発表された。ベースはインプレッサと同じくスバル・グローバル・プラットフォーム(SGP)で、ねじり剛性を10%高めたアップデート版。オールスティールのままだが、多少の軽量化も果たしている。 4.5mをわずかに切る全長は、現在のCセグメントハッチバックとしては短いが、1600mmという全高は一般的なハッチバックを200mmほど上回る。これはルーフレール込みというだけでなく、長いコイルスプリングを備えて220mmの地上高をもたらすサスペンションも一因だ。この路面とのクリアランスは、下手な中大型SUVすら上回る。無論、エアサスで車高アップできるものは別だが。 英国を含む欧州仕様は、e-ボクサーと銘打ったマイルドハイブリッドのみの設定。2.0L自然吸気の水平対向4気筒ガソリンに、16ps/6.8kg-mのモーターと、0.57kWhのリチウムイオンバッテリーという控えめなアシストを加えたパワートレインだ。 スバルがこのハイブリッドに求めたのは、軽くてスペース効率に優れること、そして、オンロードでもオフロードでも素早くエネルギー回復ができること。その代わり、ドライバーがEV走行モードを選択することはできない。 4WDシステムの前後駆動力配分は60:40が基本で、必要に応じて自動調整。リアへ50%以上分配することもできる。これにマッド&スノータイヤを組み合わせ、このサイズと価格帯では稀な悪路走破性を実現している。 136ps/18.5kg-mというスペックは、先代にあたるXVのe-ボクサーを下回るが、リニアトロニックことCVTの入念なチューニングにより、データ上は見劣りしないスペックを発揮することになっている。とはいえ、競合車に比べてアンダーパワー気味なのは、先代から変わっていない。 いっぽうで、細部には進歩も見られる。たとえばリアワイパーは、拭き取り範囲を45mm拡大。フロントには、ADAS用カメラの性能を確保するため、第3のウォッシャーノズルが設置された。