新社長は「失敗してもいいから、とにかくやれ」と言い続けた ゴミ処理のCO2を光合成に、JALとコラボで野菜を出荷 スマート農業を支える企業の挑戦
◆カリスマ社長の後継、課題はトップダウンからボトムダウンへの転換
――代表就任後、誠和にはどのような課題がありましたか? 代表に就任して注力しているのは、組織の体質をボトムアップ型に変えることです。 3代目である父がカリスマだったせいか、誠和は長い間トップダウン型が基本でした。 父が社長を勤めていた12年間で、トップダウン型が組織にすっかりしみついてしまい、急に変わるものではありません。 社長室を開放して誰でも入ってこれるようにしたり、「とにかく失敗してもいいからやれ」と言い続けたりしました。 徐々にではありますが、流通支援事業のきっかけになった社員のように、若手社員の意識が変わりつつあることも感じています。 ――どのような場面で変化を感じるのでしょうか。 たとえば、バックオフィスである総務は、基本的にお金を稼ぐ部門ではありません。 これまでは「言われたことをやる」という風土だったのですが、いまは違います。 「厚生労働省や経済産業省でこんな補助金があるらしい」ということを自分たちで見つけてきて、会社の利益になる取り組みを積極的に行なうようになりました。 同様にシステム企画部では、本来はシステムを開発する部門ですから、簡単にいえばお金を使う立場なわけですが、IT関連の補助金を見つけてきました。 営業部門では、受動的な姿勢が目立ったのですが、「どんどん売っていこう」という攻めの姿勢を持つ社員が見られるようになりました。 このように、社員それぞれに「自分も会社に貢献しよう」という意識が芽生え、自らの意思で行動したり挑戦したりしているのは、自立型人材が育っている証しだと捉えています。 社長室に、社員が「社長、ちょっといいですか」と相談にくるケースが増えたことを感じています。
◆ゴミ処理で出るCO2が、農作物を育てる仕組み
――ほか、近年注力していることを教えてください。 私の代になってから注力しているのが、脱炭素の取り組みです。 ゴミ処理場や産業廃棄物処理施設は、CO2を放出します。 政府が「2050年カーボンニュートラル」を掲げていますが、人口減少傾向とはいえ、ごみがゼロになるわけではありません。 そのなかでおもしろい取り組みをしているのが佐賀市です。 佐賀市清掃工場では、ごみの焼却時に発生する排ガスから二酸化炭素(CO2)のみを分離回収する設備を設置し、CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)プラントを使って施設園芸で利用するという取り組みを始めました。 ゴミ処理場と農業用ハウスを隣接させ、ゴミ処理で発声したCO2を農業ハウスに供給し、作物の光合成のための資源として活用するのです。 ――誠和は、この取り組みにどのように関わっているのでしょうか。 これは佐賀市が主導で始めた取り組みですが、弊社もご縁をいただいて佐賀市の方々と交流するようになり、この取り組みを全国に広めたいという気持ちを強く持ちました。 そこで誠和の技術を活用し、「施設園芸エネルギーデザインシステム」を開発しました。 このシステムにゴミ処理場が排出するCO2量を入力すると、「ここで排出されるCO2を使うと、このくらいの面積の農業用ハウスを運営できる、すなわちそれだけのCO2削減効果がある」ということがわかるのです。 ゴミ処理場からすれば、CO2を農家に売るわけなので、立派な収益になります。 農業の方と工業の方のコミュニケーションをつなげるシステムです。 2024年4月1日から開始しました。