習志野、春初の8強 雄姿に応援も熱く(その1) /千葉
<第91回センバツ高校野球> 好投手を擁する優勝候補に粘り強く逆転勝ちした--。第91回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)第6日の28日、習志野は第3試合で星稜(石川)との2回戦を3-1で勝利し、センバツで初の8強に進出した。二回に先制を許した習志野は、四回に竹縄俊希主将(3年)の右前適時打で同点とし、七回に敵失で勝ち越し。二回から登板した飯塚脩人投手(同)が好投する中、九回には兼子将太朗捕手(同)が本塁打で突き放した。習志野は大会第9日の31日午前8時半から市和歌山(和歌山)と対戦する。【秋丸生帆、黒詰拓也、土谷純一】 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 ◇優勝候補に逆転勝ち ▽2回戦 習志野 000100101=3 星陵 010000000=1 吹奏楽部が「悔いのない応援を」と三塁側アルプス席に呼びかけ、試合は始まった。全国屈指の右腕、奥川恭伸投手(3年)を擁する星稜を相手に、1回戦のような大量得点は難しかった。 一回表、2三振を奪われ、根本翔吾主将(同)が死球を受けるなど、厳しい立ち上がり。スタンドは緊張した様子に包まれた。習志野の先発は下手投げの岩沢知幸投手(同)。安打を浴びながらも打たせて取る投球を続けたが、二回裏2死で失点を許した。 四回表2死一、二塁、竹縄主将が2ストライクと追い込まれながら、4球目を右前にはじき返し、二走の高橋雅也選手(2年)が生還した。二塁上でガッツポーズする竹縄主将を見て、母織子(しきこ)さん(48)は「(死球で)交代した根本君の分まで打とうと思ったんでしょう。そういう友情に厚い子です」と満面の笑みを見せた。 失点直後の二回途中から継投した飯塚投手は、奥川投手に劣らない好投を見せた。「逃げたら負け」と全力投球。五回裏に死球などで1死二塁のピンチを迎えたが、直球を中心に後続打者を内野ゴロに打ち取り、拳を握った。応援席では涙を流して喜ぶ吹奏楽部員も。飯塚投手の父信幸さん(48)は「夢の舞台。緊張はするだろうけど、楽しんでほしい」とエールを送った。 七回表1死から兼子捕手が右前打で出塁すると、好機に演奏する「レッツゴー習志野」が甲子園に響いた。犠打で2死二塁とし、1回戦に3点適時三塁打を放った角田勇斗選手(2年)が三塁線に強い打球を放ち、敵失を呼び、逆転に成功した。スタンドの野球部員からは「(幸運を)持ってる男」と歓声が飛び、角田選手の母みゆきさん(44)は「前の打席まで三振だったので祈るような気持ちだった。よく打ってくれた」と手を合わせた。 九回表、飯塚投手の好投を支えた兼子捕手が左越え本塁打を放つ。母環さん(50)は「まさか打つとは思わなかった。頭が真っ白になってきた」と興奮した様子だった。 九回裏の守備を前に、応援席では「勝てるかな」など、さまざまな声が漏れていた。飯塚投手は周囲の不安を吹き飛ばすように、打者3人を中飛、内野ゴロ、右飛に打ち取り、試合を締めた。勝利の瞬間を待ちわびたスタンドは歓声を上げて喜び、飯塚投手の名前を叫びながら好投をたたえた。 歓声の中、小西薫校長は「序盤のつらい展開を耐えて逆転する、習志野らしい野球だった。素晴らしい、うれしいの言葉しかない。次の試合も頑張ってほしい」と感動していた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■白球譜 ◇フェンスに激突、好捕 竹縄俊希主将 習志野・3年 「絶対打てよ」。死球を受けて交代した根本翔吾主将(3年)に背中を押され、「任せろ」と答えて打席に立った。1点を追う四回2死一、二塁、変化球に食らいつき、打球は右前にぽとりと落ちた。二塁に滑り込むと、ベンチで大きくガッツポーズする根本主将の姿が目に入った。「最高にうれしかった」 3兄弟の次男で、兄の影響で小学校から野球を始めた。母織子さんは「昔からいつもポジティブで負けず嫌い。そして弱音をはかない」と語る。昨秋の県大会で、主将の重責から調子を落とした根本主将を支えるため、チームは「ダブルキャプテン」を敷き、2人目の主将を任された。 2人の主将は中堅手と左翼手のコンビ。目配せだけで互いの守備位置や動きを確認できるまで信頼は深い。一回表に右足に死球を受けた根本主将は二回まで守備に就き、交代した。「根本は足を引きずっていたが、試合に出たそうだった」。交代の悔しさがわかった。 甲子園の大舞台で初めて1人だけの主将としてグラウンドに立ち、「強い気持ちで試合に臨んだ」。六回裏には左邪飛をフェンスにぶつかりながら好捕した。チームとして初となるセンバツの準々決勝に向けて、「全員で一体感を持って戦いたい」と気を吐いた。【秋丸生帆】