フランス下院選挙:極右政党の「財源なき歳出拡大」への懸念
フランス国債市場の動揺が続く
国債発行に支障が生じた際に、中央銀行が自らの判断で自国の国債を引きうけることができないユーロ加盟国は、国債のデフォルト(債務不履行)リスクが国債利回りに上乗せされやすい。実際、フランス国債のドイツ国債とのスプレッド(利回り差)は、2017年以来の高水準に達している。選挙結果次第では、フランス国債の利回りは一段と上昇し、経済に打撃となる。 欧州中央銀行(ECB)は利回りが過度に上昇した加盟国の国債を買い入れることが可能だ。しかしそれは、その国の財政が健全であるか、健全化に向かっている場合に限られる。国民連合(RN)が政権を握り、財政拡張路線を進める中でフランスの国債利回りが大幅に上昇しても、ECBはフランス国債を買い入れて利回りの上昇を抑えることはしない可能性がある。 金融市場の財政悪化懸念に配慮して、国民連合(RN)で財務担当責任者を務めるジャン=フィリップ・タンギー議員は、同党が政権を獲得した場合は、財政赤字の拡大に歯止めをかけ、EUの財政ルールを順守すると強調している。2027年までに財政赤字を3%まで削減する現在の計画を維持し、財政の会計検査も行うと述べている。
国民連合(RN)の財政政策に根強い懸念
しかしながら、金融市場での懸念は根強いものがある。国民連合(RN)は2022年の大統領選で、年間1,000億ユーロ(約17兆円)以上の追加予算が必要となる政策を打ち出していた。国民連合(RN)の党首で選挙結果次第では首相の就任も見込まれるジョルダン・バルデラ氏は、党の公約規模を縮小し、政権に就いた場合にはまずは財政監査を実施すると述べている。 しかし実際には、国民連合(RN)は電気、ガス、燃料料金の付加価値税の早急な引き下げと、年金の受給開始年齢を62歳から64歳に引き上げたマクロン氏の政策の見直しを公約に掲げている。この2つの政策だけで、年間200億~300億ユーロが必要になるとアナリストは試算している。一方その財源については、官僚主義の是正、税の抜け穴への対処、移民の社会福祉制限で賄えるとしているが、その説明は具体性を欠いているとの受け止めもされている。