余熱利用や景観配慮で進化する地熱発電 発電量全国2位の秋田県で新設続く
大手事業者の計画に温泉旅館などが反対して賛否が2分。地域の分断や過疎化を心配する住民らが、源泉に影響しない規模で経営して地元に利益をもたらすことで建設が実現。平成27年に商用運転を始めた。
住民の合同会社が発電所の管理運営を委託しているふるさと熱電(同町)の赤石和幸社長は「何百年も温泉を守ってきた地域によそ者が入ると対立が起きやすい。地元の土地や温泉を残したまま事業を行い利益をもたらす地域共創の姿勢が基本」と強調する。
売電などの収入が年間6億円に上り、うち約1億円が住民側の利益に。余熱利用の温泉供給やスマート農業も展開し「令和8年春の商用運転を目指して第2発電所も建設している」という赤石氏は、この成功例を「わいたモデル」として全国に発信している。
■樹林に溶け込む配色も
近年は発電施設も自然景観を保全して影響を最小限にする「エコロジカル・ランドスケープ」手法で設計される。令和8年度末の運転開始を目指し、かたつむり山発電所の建設を進める小安地熱(湯沢市)の三浦聡裕建設部長は「近隣道路から見えるため、発電建屋は高さを抑えたかまぼこ型開閉ドームで色も樹林に溶け込むダーク系にする。パイプラインなど他施設も樹木で隠れるレイアウトにしている」と話す。
さらに将来の地熱利用について浅沼氏は超臨界地熱発電を挙げる。火山帯の地下5千メートル付近には高圧によって500度にもなる超臨界水があり、これを用いると原子力並みの発電量が得られるといわれており、「2040~50年の実用化に向けて超臨界地熱発電の開発が始まっている」と説明する。(八並朋昌)