1980年代にヒットした日本のFFファミリーカー3選
(3) ホンダ「シビック」(3代目)
1980年代のスマッシュヒットといえば、ホンダが1983年に発売した3代目シビック。初代シビックは、北米でもそれなりに評価されたという情報もあり、知的で好ましい印象だったが、2代目はあまりにキープコンセプトでがっかり。3代目は大胆な飛躍に驚かれた。 3代目シビックは、メインモデルを2ドアハッチバックにしぼったコンセプトもおもしろかった。よくこんなおもしろいデザインを採用したものだ、と、いたく感心させられた。リヤビューもガラス面積を大きくとったハッチゲートが個性的だ。 シビックは1972年に初代がデビューしていらい、前輪駆動方式を貫いていた。ただし、3代目が出たときでも、ホンダの製造ラインはロングホイールベースに対応しておらず、斬新なボディデザインだったもののホイールベースは2380mmにとどまっていた。現在のホンダNのホイールベースは2520mmだ。 イメージモデルは2ドアハッチバックだった。これはどちらかというと若者対象。ファミリー向けとしては、ほぼ同時に発表された4ドアノッチバックセダンと、3ドアのステーションワゴン版ともいうべきユニークなデザインコンセプトの「シャトル」が用意された。 シャトルでも、しかし、ホイールベースは2450mmしかなく、後席はキツかった記憶がある。それでも、全長4.0m弱のユニークなボディデザインはいまもじゅうぶん通用しそう。コンパクトだけれど荷物をたっぷり積めるというボディのシャトルを使い倒すなんて、いまもおもしろそう。 個人的な思い出だけれど、当時のホンダはジャーナリストが乗って記事を書く参考にする、いわゆる“広報車”のほとんどにエアコンを装着していなかった。なので、夏場に借りると、もう地獄のような暑さ。 しかも等速ジョイントの問題か、パワーのあるモデルだと発進時などで強めに加速すると、ハンドルを片方向にとられた。年を追い、モデルチェンジが繰り返されていくうち、ホンダ車はどんどん洗練されていった。自分たちとともに成長するようなイメージだなぁと、私は思ったものだ。
文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ)