1980年代にヒットした日本のFFファミリーカー3選
(2) 日産「サニー」(5代目)
今の若いひとは知らないかもしれないけれど、1980年代までは“ファミリーカー”という一種のカテゴリーがあって、大きな市場を形成していた。そこで支配的だったのは、トヨタ・カローラと、日産のサニーである。 サニーが前輪駆動化したのは、1981年。やはりラインナップの大幅な前輪駆動化をはかっていた日産では、ファミリーカーのセグメント向けに、1978年に「パルサー」、1980年に「ラングレー」と前輪駆動車を発表。さらに、1980年には「バイオレット」の3代目を前輪駆動化したのだった。 5代目サニーは、当時のベストセラー。全長を4050mmに抑えたボディに2400mmのホイールベースをもつシャシー。小まわりのきくサイズがセリングポイントだった。いっぽう、伸張していた“若者市場”への対応は早く、最初は2ドアクーペと、ワゴンの「カリフォルニア」そして後にハッチバックを追加したのだった。 個人的には、とくにカリフォルニアがおもしろかった。ステーションワゴンボディの側面にウッドパネルのデカールを張っただけで“カリフォルニア”というネーミングも能天気。たしかにアメリカ・ロサンジェルス界隈では、ウッド合板をボディに貼った“ウッディ”なる改造があって、そのイメージだったんだろうか。 カリフォルニアはコンパクトサイズのワゴンというコンセプトは、いまから見ても秀逸だ。いまの世代に北米サブカルチャーへの憧れがあるのかわからないけれど、たしかに私が知っているこのクルマの現役時代は、サーフィンをやっている友人たちが、サニー・カリフォルニアに好んで乗っていた。ただしリヤシートの出来は最悪で、南東京から九十九里まで走っていくと腰が痛くなったものだけれど。 当初は1.3リッターと1.5リッターのエンジンラインナップ。走りはおとなしかったが、のちに1.5リッターターボが出て、キャラクターがはっきりした感がある。 日産って、しかしながら、「スカイライン」とか「フェアレディZ」をもっていたせいか、このセグメントにスポーティモデルを投入するのはあまり熱心でなかったもよう。1988年の「シルビア」のヒットでわかるように、みんなスポーツモデルが好きだったんだけど。