密着ドキュメント「涙のパリ」、ニッポン男子バレー"史上最強チー ム"の肖像
■「世界最高のリベロ」山本が見せた輝き 2セット目は、「世界最高のリベロ」山本智大が輝きを見せる。終盤までリードされる展開で、23-23と追い上げたところだった。山本は腕一本のディグ(スパイクレシーブ)を披露。勝っていたら語り継がれるだろう神業で、石川のスパイクにつなげた。 焦ったイタリアはタイムアウトを取るも、再び山本がディグに成功。やはり石川が得点し、25-23で接戦を制した。 「一般の人からすると、バレーは決めないと勝てないスポーツだと思うんです。でもリベロからすると、1本目(のレシーブ)がないと2本目、3本目もないっしょって」 大会前、山本は守りの矜持を語り、こう続けている。 「1本目がどれだけ大事か。その質だったり、サーブを入れて、ブロックとディフェンスの関係性だったり。日本はここ数年でそこがめちゃくちゃ良くなって、結果も残すようになったので。自分としては、そこに打たせている感覚。僕のコースは開けてもらい、そこに自分がいて(レシーブを)上げるシステムです」 2セット目、日本の攻守は確実にリンクしていた。〝史上最強〟の証明にも見える逆転劇だった。 3セット目、髙橋が3枚のブロックを打ち抜き、スイッチがオンに入った。鋭い角度のスパイクをインナーに決め、ブロックを出し抜くフェイントも成功。攻撃だけでなく、ディグで石川の得点もアシストした。石川と同じオールラウンダーの面目躍如だ。 「自分自身、身長が(世界トップレベルでは)そこまで高くないので(188㎝)、レシーブでクオリティの高いバレーボールをしない限り、得点を取りにくいと思っています。 上から打てるわけじゃないので、セッターが上げやすい位置にレシーブして、セッターがいい状態で上げられるか。日本は、その〝いいバレー〟を基本にしないと勝てないので、自分は質にこだわっています」 大会前にそう語っていた髙橋はその信条を体現した。 一方で、西田もセッターである関田誠大との連係が芸術的だった。そして、バックトスをライトから左腕を回して打つショットは破壊力満点。レシーブした相手の腕を吹っ飛ばした。 また、そんな豪快さ以上に、実は技量が高い。3セット目、空中で体をそらしながらタイミングとコースを変えて打ったショットは出色だった。相手の右手に当て、ブロックアウトを取り、チームに勝ち筋を見いださせた。