フジタカが大切にしてきた、「日本の技術」「日本の感性」「日本の心配り」。こだわりは常に更新されつづけている。
日本の心配りが通底する、〝メイド・イン・ニッポン〞
作り手の気質が〝メイド・イン・ニッポン〟を形作っているのは、先述したとおり。情緒豊かな四季や多彩な文化が育んだ感性と繊細な心配りもまた「気質」と言えるだろう。フジタカでは、収納機能を設計する際、常にスマートフォンやタブレットの最新機種を手に入れ、使い勝手やサイズ感を確認するという。伝統や歴史に固執せず、アップデートを怠ることはない。細やかな心配りは、独自に製作した裏地にも見て取れる。素材によっては、湿気が多いと色落ちや色移りする恐れがあり、生地が波打ちして表地の風合いやたたずまいに悪影響を及ぼすこともある。そのため、梅雨が長い日本の気候を考慮して、染色堅牢度が高く収縮率の低い糸で織り上げたオリジナルの裏地を採用している。 心配りの矢印が向く先は、何もユーザーに限ったことではない。環境負荷を減らす材料や生産工程の開発を積極的に支援するなど、地球や働く人の問題を解決する活動も行う。 日本の技術、日本の感性、日本の心配り。フジタカが大切にしてきたこだわりは常に更新されつづけている。 清掃の行き届いたクリーンな工房から、フジタカのプロダクトが生み出される。工房内には、20代~70代まで幅広い年代がそろい、常に活気に満ちている。職人はそれぞれ、型紙に沿ってフリーハンドで革を裁断したり、革と芯材を貼り合わせてパーツを成形したりと、工程に沿って作業を進めていく。なかでもミシンを使ったステッチワークは、腕の見せどころ。極めて緻密な作業だが、ミシンを体の一部のように操ってスピーディーに縫い上げる。全員がプロフェッショナルであり、フジタカプライドを胸に切磋琢磨することで技術の向上を目指す。 Photograph: Tetsuya Niikura Styling: Hidetoshi Nakato(TABLE ROCK.STUDIO) Hair & Make-up: Ken Yoshimura Text: Tetsuya Sato 大野拓朗(おおの・たくろう) 1988年、東京都出身。NHK連続テレビ小説や大河ドラマをはじめ、数多くのドラマ、映画、ミュージカル、舞台作品に出演。近年は、活動の場を海外にも広げ、10月にニューヨーク公演を終えた『進撃の巨人』-The Musical-では、主要キャストのひとり、エルヴィン・スミス役を務めた(12月~2025年1月に日本凱旋公演)。日本の逸品同様に、世界が見ほれる才能としてさらなる飛躍が期待されることから、本企画のモデルを依頼。
朝日新聞社