身体障害者野球 日本代表選手と理学療法士が語るこれまでの歩みと今後の展望「第59回日本理学療法学術研修大会 in東京」
村岡さんは18年そして昨年の世界大会で日本代表のマネージャーを務めており、世界一連覇のメンバーでもある。チームに帯同していた際、外傷を負った選手に速やかな対処をするなど、理学療法士としての経験を活かした体のケアを行った。 理学療法士がさらに活躍の幅を広げるため、情報連携が必要なピースになるとして以下の私見を述べた。 「どのような特徴の選手がいてどんな関わり方があるかを知ると、さらに可能性が広がると思います。チームやPT協会または日本身体障害者野球連盟が組み、合同での勉強会を開催できれば双方の更なる発展に繋がると考えています」
最後は帝京平成大学に勤務する田中直樹さん。田中さんは整形外科やスポーツ医学系の分野で長らく活躍しており、甲子園の全期間での帯同やプロ野球選手のリハビリも担当するなど豊富な経験を持っている。 現在は身体障害者野球チームのグラウンドへ定期的に足を運び、選手個々の状態に合わせて助言を送っている。 本講演ではそんな田中さんが診た数人をピックアップし、実際に行ったアプローチを紹介していった。 また、事前に身体障害者野球の選手64名にアンケートを集計。障害の内訳や野球における影響、野球をしていることによって出た症状などの結果を共有した。 その問いの一つにあった「選手が”求めていること”」について紹介した田中さんは、導き出された見解について明かした。 「理学療法士にどうしてほしいという意味ではなく、選手に”どのようなサポートを求めますか”という問いを設けました。その回答を見ると、選手たちのニーズと我々の強みが合致する競技だと感じたんです。 多様な疾患・障害があって、個別に考えていくこと。それは解剖や運動学といった、我々が養成校時代から学んできたことに立ち返ることなんだなと。なので、結果的に理学療法士の強みが自然と活きる分野なのだと思っています」 最後は登壇者5人に向けて聴講者からの質疑応答コーナーに。一人ひとりが身体障害者野球への想いを伝え、会は終了。 競技と理学療法士の新たなパイプが構築され、講聴した理学療法士の方々にとって新たな発見の場となった。 (おわり)
写真 / 文:白石怜平