【2025年どうなる原油価格】中国需要のピークアウト、サウジアラビアへの中東危機拡大…懸念されるリスクとは
■ 市場を混乱させかねない「トランプ関税」 米データ分析企業ケプラーは「米国の2024年の対中原油輸出量は2023年の1億5060万バレルから8190万バレルに激減した」との分析結果を明らかにしている。 大口輸出先を失ったからだろうか、トランプ次期大統領は12月20日、米国産原油の最大の買い手である欧州連合(EU)に対し、「原油や天然ガスをより多く購入しなければ関税を課す」と脅しをかけた。 トランプ氏は原油の最大の輸入先であるカナダに対しても25%の関税をかけると主張しており、今年の原油市場は「トランプ関税」に振り回されることになりそうだ。 中国の原油需要の低迷を尻目に、「インドが次の中国になる」との期待が関係者の間で広まっている。 国際エネルギー機関(IEA)は12月に公表した月報で「インドの2024年の原油需要の伸びは日量22万バレルで初めて中国(日量9万バレル)を超える」との見方を示した。IEAはさらにインドの2025年の原油需要の伸びは日量33万バレル、中国は同25万バレルとそれぞれ増加すると見込んでいる。 インドの原油需要の伸びは確かにめざましい。だが、それでも役不足の感は否めない。中国の原油需要は日量約1500万バレルであるのに対し、インドは日量約500万バレルとその3分の1に過ぎないからだ。 インドの経済成長自体が減速し始めていることも気がかりだ。 世界の原油需要の牽引役が不在となったことで原油価格は今後さらに下落する可能性が高いと筆者は考えている。攪乱(かくらん)要因は中東地域の地政学リスクだ。
■ フーシ派が中東の原油供給を脅かす イスラエル軍の1年以上にわたる攻撃により「抵抗の枢軸」(イランが支援する中東地域における武装組織のネットワーク)は戦闘不能の状態に近づいている。唯一気を吐いているのはイエメンの親イラン武装組織フーシ派だ。 フーシ派は12月21日、ミサイルでイスラエルの商都テルアビブを攻撃し、16人の負傷者が出た。フーシ派は25日にもミサイルを発射している。 これまでのところ、イスラエル側の被害は軽微だが、数百万人規模の避難民が発生する事態となっており、イスラエル政府は窮地に追い込まれている。 これに焦ったネタニエフ首相は「フーシ派の指導者全員を追い詰める」と宣言、イスラエル軍は猛攻を仕掛けているが、フーシ派は攻撃の手を緩めようとしない。 中東産原油の供給途絶を警戒する声が少なくなっている中、12月28日付ブルームバーグは「中東地域で原油供給を脅かすリスクが高まっている」と報じた。原油供給に支障を生じさせる要素がなかったハマスやヒズボラから、サウジアラビアと事実上戦争状態にあるフーシ派へと紛争の中心が移行しつつあるからだ。 フーシ派は2019年9月にドローン攻撃でサウジアラビアの原油生産能力の約半分に大打撃を与えたという「前科」がある。 2023年3月にイランがサウジアラビアと国交を回復させたことを受け、フーシ派はサウジアラビアへの攻撃を停止した。しかし、中東の両大国が再び対立する火種が生まれている。