創設6年目で全国制覇 なのに方針転換 岡山・ねや卓球クラブの挑戦とは
優勝した日に決意「違う登り方を」
――全国での実績も、卓球場経営も理想的に見えますね。 祢屋康介:当時、何もわからないなかで、もがきながら、いろんなトラブルもありながら、選手も保護者の方も含めみんなで無我夢中でやって、やっとあそこまで辿り着いたのが正直な実感です。 これをこうしたから全国優勝しました、みたいな再現性のある優勝じゃないので、この1回で終わってしまうような感覚がありました。 ――なるほど。 祢屋康介:優勝したその日に、“違う登りかたを試してみたい”と決意しました。 同じ道を繰り返す方法で人を導きたくない、というタイプなんだと思います。
楽しいからこそ勝てるはず
――具体的にはどう変わったんですか。 祢屋康介:率直に言えば、“もっと美しい勝ち方があるんじゃないか”ということです。 自分たち指導者も、保護者も、子どもたちも、みんなプレッシャーを感じて結果を出すという成功法則もあると思います。でも、それはみんな疲弊します。 つらいな、と思いました。 祢屋康介:それじゃないと勝てないという考え方も否定はしませんが、それは既に他のクラブがやってきています。 見ている人も気持ちが良くて、やってるほうも勝って嬉し涙が流せるようなチームにして、子どもたちを健全に育成したい、という思いです。 ――勝つことと、楽しいことの両立。 祢屋康介:勝利主義かエンジョイか、という論争がありますが、僕はどっちも取ればいいんじゃない、と思うんです。 勝利至上主義と一般的に言われてきたやり方より、もっと勝利至上主義なのがエンジョイも取り入れた形だと、信じてやっています。 勝ちを求めるからこそ、子どもたちを伸び伸びやらせること、保護者の方と良い雰囲気で進んでいくことが大切なんだというふうに、変わりました。
充実の基本練習メニュー
――練習を見せていただいて、基本練習のメニューが多いなと思いました。 祢屋康介:中国での学びでもお話ししたように、“画期的な練習”というものは卓球には求められてないと思っています。 試合を通して出てきた課題に、個別の特訓抜きでそれを解決できるか、という部分に、私たちの工夫はあるんですけど。 ただ、基本練習だけは、限られた短い時間で将来生きてくるいろんな技術を薄く広く入れているので、基本練習メニューは日本で一番多いかもしれません。基本練習に、バックドライブの引き合いまで入れてます。 時間は合計で30分くらいしかないんですが。 <ねや卓球クラブの基本練習メニュー・12種> メニュー12種類を交代しながら約30分間 ①フォア打ち ②フォアクロスドライブ ③バック打ち ④回り込みバッククロスドライブ(下回転サーブ3球目から) ⑤バックツッツキ ⑥フォアツッツキ ⑦中陣バックドライブ ⑧前陣バックドライブ ⑨フォアドライブで引き合い ⑩どちらかが前でカウンター ⑪バックドライブで引き合い ⑫チキータレシーブから前陣でバックドライブ対バックドライブ ――時間や入った数でなく、打った回数でメニュークリアにしていましたね。 祢屋康介:進みの早いペアはより高度な基本練習を最後までやり抜くことになり、進みの遅いペアはより基礎的な部分にフォーカスしたメニューで終わる。 ミスを減らすための練習だと思っているので、数を意識することも大事にしています。