売春指示され、大久保公園で立ちんぼ…〝無間地獄〟に「捕まえてくれてありがとう」 深層 歌舞伎町
「警察の方に『洗脳状態だったんじゃないか』と言われて。その通りだなと思いました」 アヤカさん(29)=仮名=は昨秋、東京・歌舞伎町の大久保公園周辺で、売春目的で男性を待つ「立ちんぼ」を行い、警視庁に逮捕された。交流サイト(SNS)で知り合った男性に売春を指示され、カネを搾取されていたアヤカさん。「その人のために稼がなきゃと思っていた。普通の心境ではなかった」と振り返る。 【写真】女性が並ぶ「立ちんぼ公園」と呼ばれる大久保公園前。全体的に若く、ルックスもいい ■威圧され言いなりに 男性と知り合ったのは約2年前。飲食店で勤務する傍ら、好きなアーティストの地方でのライブに行く費用などを稼ぐため、X(旧ツイッター)で「パパ活」募集をする中で会った相手だった。男性はパパ活を協力して行うことを提案。男性が女性の代わりに投稿やメッセージのやりとりを行い、女性が客とホテルに入っている間にも次の客の約束を取り付けるというものだった。稼ぎは折半だが「2倍稼げる」と言われ、応じてしまった。 男性は無職。アヤカさんの家に住みつき、次第に生活を管理するようになった。稼働時間を増やすため起床時間などを細かく決め、気に障ることがあると髪をつかんで頭を床にたたきつけ、馬乗りになって首を絞めた。売春の出張や立ちんぼも行うようになり、仕事は辞めさせられた。 プライドを奪ったのは、「高卒のお前はこんなことでしか稼げない」との言葉だった。経済的に大学進学が難しく、高校卒業後に就職したアヤカさん。「『早く卒業して自分も稼がなきゃ』と思って社会に出たが、自分はだめなんだと思うようになっていった」 ■限界での逮捕 転機となったのは、立ちんぼ行為で一度、逮捕されたことだった。釈放後も立ちんぼをするよう指示されたが、「また捕まると思った」。稼ぎの全額を持って行かれるようになり、毎朝起きては歌舞伎町に行く生活が続いた。 そして昨秋、アヤカさんは歌舞伎町のホテルに入ろうとしたところで2度目の逮捕をされた。「やっと解放される。よかった」。安心して体の力が抜け、「捕まえてくれてありがとうございます」と言葉がこぼれた。 最初の逮捕で黙っていた男性のことも、全て話した。女性警察官から「まだ若いんだからやり直せる」と言われた。アヤカさんは紹介された自治体の支援を受け、シェルターに避難。一時的な生活保護の申請や家探しを始めた。役所で求人票を見たりパソコンの講習を受けたりし、面接を経て事務の仕事に就いた。