ジェイミー・xxが語る最新作「In Waves」と「サンプリング」、そしてThe xxについて
ロンドンが生んだ稀代の才能も、気付けば随分とキャリアを重ねていた。私は幸運にも、彼の偉大な始まりに直撃し、彼の音楽と共に過ごしてきたわけだがザ・エックス・エックス(The xx)が2009年に最初のレコードをリリースしてから、15年もの月日が経ったことがいまだに信じられない。 【画像】ジェイミー・xxが語る最新作「In Waves」と「サンプリング」、そしてThe xxについて
ジェイムズ・スミスというありふれた名前の青年は、バンドでデビューした20歳の頃から、ジェイミー・エックス・エックス(Jamie xx)という奇妙なステージネームを名乗っている。極めてシンプルでありながら、なぜか派手派手しくもあり、とは言いつつも洗練されたその名は、彼の作家性とフィロソフィーそのものを表しているのではないだろうか。
初めてザ・エックス・エックスの「VCR」を聴いた当時14歳の私は、ギターを始めたてで、いとも簡単に演奏できるこの曲のフレーズを繰り返し弾いていた。トイピアノに似たキュートでアイコニックなサウンドと、シンプルなギターフレーズとベースラインが印象的であるが、ただ、その裏で巧みに抜き差しされるビートの妙に気付くのは、かなり後のこと。ミニマルとマキシマムを行き来する、彼の音楽について気付きが増えるたびに、彼のあまりにもオルタナティブな才能に圧倒され、なぜか落ち込んでしまう。
また彼は、弱冠22歳でギル・スコット・ヘロンの遺作のリミックスを買って出る、気骨のある人間だ。そのリミックスアルバムが、ソロキャリアの始まりであることも恐ろしいが、それがまた超エポックメイキングなのである。この「We're New Here」(2011年)と、ソロ1stアルバム「In Colour」(15年)に共通して感じたのは、サンプリングを用いる中で見せる引用元へのリスペクトと音楽への愛。サンプリングは、引用元の楽曲のストーリーテリングを更新することができる特別な表現方法であるが、彼は自身がティーンだった頃にダンスシーンで活躍していたレジェンドたちから、それを学び取った。