レバノンの通信機爆発はどう仕組まれたのか
しかし、ヒズボラはハマスとは規模が違う。ナスララ師によれば、依然として10万人の戦闘員(外部の推定では2万人から5万人)を擁し、12万から20万発のロケット弾やミサイルを配備する巨大組織である。 ナスララ師が軍組織を統制するために伝令や手書きメモなどに頼らなければならない場合、部隊の作戦能力は著しく低下するだろう。特にイスラエルの本格的な攻撃に直面している現在はなおさらだ。 いずれにせよ、今回のイスラエルの通信機器爆破攻撃は、現代の戦闘部隊の大きな弱点の1つである通信ネットワークを狙った緻密で計画性のある「現代のトロイの木馬」作戦だといえる。
■無差別攻撃は国際法違反 そもそも国際法では、通信機器のような危険性のない無害を装った「ブービートラップ」こと仕掛け爆弾の使用は禁じられている。 また、たとえヒズボラのメンバーらによって使用されていた通信機器を爆発させることを狙ったものであったとして、それはポケベルを持っている人が偶然いた場所、つまり、自宅や車の中、路上、食料品店、市場、カフェ、さらには病院など日常生活の場で、家族や通りすがりの人などまったく罪のない人々が近くにいる時に発生した。
数千のポケベルやトランシーバーを一斉に爆発させることは、国際法で禁止されている無差別攻撃に当たり、国際人道法に背く非人道性と非人間性にほかならない。民間人を狙った意図的な攻撃や殺害は戦争犯罪に当たる。 ポケベルが鳴ったとき、それがショッピングセンターなのか、住宅なのか、あるいは交通量の多い通りなのかを知る術はない。現地報道を目にすると、負傷した人の中には血まみれになり、手足や指を失った人も少なくない。レバノン駐在のイラン大使も負傷した。
例えば、アメリカのニューヨーク・タイムズ紙によると、9月18日にはベイルートの南郊に何千人もの人々が集まり、前日17日のポケベル攻撃で死亡したヒズボラ戦闘員2人、救急隊員1人、子ども1人の屋外葬儀に参列した。 そして、その葬式の場で、ヒズボラのメンバーが所有するトランシーバーが爆発し、煙の刺激臭にあふれ、パニックに陥って人々が大声を叫ぶなど大混乱が起きたという。 自国民に対するテロ攻撃を一貫して非難してきたイスラエルが国家によるテロ攻撃を敢行し、戦争犯罪に当たる行為を遂行しているのは極めて残念な事態で皮肉だ。