地主が突然「その銀行は家から遠いので困る」と取引場所を変更…「世田谷5億円詐取事件」の奇妙な指示に隠された”地面師”の策略
消えた5億円
そして案の定、津波の支払った5億円がその日のうちに消えてなくなる。 5億円は東亜エージェンシーの松田ら犯行グループの手によって4分割され、北田の関係先に振り込まれた。東亜エージェンシーを介して1億3000万円が北田の手に渡り、さらにその日のうちに犯行グループが仕立てた大阪のペーパーカンパニーに3億3000万円ほどが振り込まれていたのである。 いわば籠脱け詐欺のようなものだ。彼らがまんまと5億円をかすめ取っていたその間、M銀行の学芸大学駅前支店に代金の5億円が送金されるものと信じ込んでいた津波側の司法書士事務所の職員は、待ちぼうけを食わされた。呆然として、どうすることもできない。むろん所有権の移転登記手続きどころではなかった。 地面師たちがNTT寮だった世田谷区の土地建物の売買を装い、買い手の東京都内の不動産業者、津波幸次郎から5億円を詐取した不動産詐欺だ。被害者の証言を中心に、事件をより詳細に再現してみよう。 『“かさ増し”した29億円を見せて「その土地を買わせてください」…取引当日に「突然現れた男」を信じてしまう“地面師”のヤバすぎる手口』へ続く
森 功(ジャーナリスト)
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