地主が突然「その銀行は家から遠いので困る」と取引場所を変更…「世田谷5億円詐取事件」の奇妙な指示に隠された”地面師”の策略
今Netflixで話題の「地面師」...地主一家全員の死も珍しくなかった終戦直後、土地所有者になりすまし土地を売る彼らは、書類が焼失し役人の数も圧倒的に足りない主要都市を舞台に暗躍し始めた。そして80年がたった今では、さらに洗練された手口で次々と犯行を重ね、警察組織や不動産業界を翻弄している。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 そのNetflix「地面師たち」の主要な参考文献となったのが、ノンフィクション作家・森功氏の著書『地面師』だ。小説とは違う、すべて本当にあった話で構成されるノンフィクションだけに、その内容はリアルで緊張感に満ちている。 同書より、時にドラマより恐ろしい、本物の地面師たちの最新手口をお届けしよう。 『地面師』連載第58回 『“地面師”が放った一言に戦慄…「世田谷5億円詐取事件」の決定打となった不動産詐欺の「魔法の言葉」』より続く
突然「一週間の猶予」を申し入れ
5月12日、津波たちは実際の持ち主とともに現場確認に向かう。かつてNTTの従業員寮として使われていたという建物に入った。 「これなら内装を少し直すだけで、マンションとして使える」 そう感じた津波は、ひとまず安堵した。すぐにリフォームする工事業者の手配をし、5億円の代金振り込みをする契約日にそなえた。 津波が打ち明ける。 「5月20日になって、初めにこの取引話を持ってきた不動産ブローカーたちが、うちの会社に北田を連れてきました。そこで北田が『一週間後の27日には決済したい』と言い出したのです。彼らからはずっと取引を急かされていたので正直、またか、とうんざりでした。それでも一週間あるので、はじめ言っていた4月の契約よりましだから、まあいいか、と了解したのです。 あとでわかったんですが、なぜ北田たちが一週間の猶予をこちらに申し出たか、といえば、その間、亀野が海外に行っていて、日本にいなかったからでした。亀野は事件で重要な役割を担った詐欺師ですからね。向こうとしては、彼が戻って来てから決済しようとなったのでしょう」
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