なぜサニブラウンはオレゴン世陸の男子100m予選で9秒98を出せたのか…今日準決勝、決勝…日本陸上界悲願のメダル可能性は?
今回のオレゴン世界陸上は予選が最終7組だったのも刺激と自信になったことだろう。 日本選手権で下した坂井が4組を着順で通過しただけでなく、米国フロリダで一緒に練習をしている仲間が順当に実力を発揮したからだ。 マービン・ブレイシー(米国)は1組1着、トレイボン・ブロメル(米国)は3組1着、アンドレ・ドグラス(カナダ)は6組2着で予選を通過している。 「練習をやってきているのが自信になっていると思いますし、チームメイトが1着で通過して、自分もやらなきゃなというのがありました。いろんな人に刺激されて、この舞台でこの走りができたのかなと思います」 サニブラウンだけでなく、今大会は予選からレベルが異様に高かった。トップタイムをマークしたのは2組のフレッド・カーリー(米国)で、世界陸上の予選では史上最速となる9秒79(+0.1m)を叩き出した。3組のブロメルが9秒89(+0.6n)、5組のレツィル・テボゴ(ボツワナ)がU20世界記録となる9秒94(+1.1m)をマークするなど、予選から7人が9秒台に突入した。 では3組(2着+2)で争われる準決勝の戦いはどうなるのか。サニブラウンは1組6レーンに入った。8人中7人が9秒台のタイムを持っている。自己ベスト(9秒97)は6番目だが、シーズンベスト(予選でマークした9秒98)は3番目タイ。キャリアと自己ベストでは2011年テグ世界選手権金メダルで9秒69のタイムを持つヨハン・ブレイ ク(ジャマイカ)と2015年北京世界陸上銅メダルで9秒76のブロメルが抜けている。 ただし32歳のブレイクは予選5組で10秒04(+1.1m)の2着通過とキレがなかった。サニブラウンが予選のようなリアクションタイムで好スタートを切ることができれば、着順(2着)での通過が十分に期待できるだろう。 世界陸上の男子100mで過去に日本人のファイナル進出はないが、「ここに歴史を作りに来ているので、通っただけでは満足できないですね。やっぱり。もっともっと上を狙っていきたいです」とサニブラウンは言い切った。本人は〝メダル〟を狙う気持ちで一杯だ。 東京五輪で銀メダルを獲得し、今季は世界歴代6位タイの9秒76までタイムを短縮しているカーリーは抜けているが、その他のメダル争いは大混戦。東京五輪金メダルのラモント・マルセル・ジェイコブス(イタリア)は5月に脚を痛めたこともあり、本調子ではない。東京五輪の準決勝で9秒83のアジア記録を樹立した蘇炳添(中国)も予選で精彩を欠いていた。 カーリーを除けば、メダル争いはサニブラウンのチームメイトであるブロメル、ドグラス(東京五輪3位)、ブレイシー(自己ベスト9秒86)。ドーハ大会の王者であるクリスチャン・コールマン(米国)、今季9秒86をマークしている21歳のオブリク・セビル(ジャマイカ)あたりが軸になりそうだ。 サニブラウンはタイムをさほど気にしていないが、「真の壁は9秒90かなと思います」と話している。メダルに近づくことができれば、日本記録(9秒95)も大きく塗り替えることができるだろう。 昨夏の東京五輪は出場した3人全員(山縣亮太、小池祐貴、多田修平)が予選で敗退した。しかし、オレゴン世界陸上では日本人スプリンターが〝快挙〟を成し遂げるかもしれない。 男子100mの準決勝は、日本時間の今日17日の午前10時00分、決勝は同11時50分に行われる。10秒足らずの熱き戦いを見逃すな! (文責・酒井政人/スポーツライター)