「日本人客は『ごめんね』と言いながら変態のような行動を要求する」韓国の性売買当事者が明かした実体験 新宿・歌舞伎町では驚きも 「痛み」を語り社会を変える
▽あふれる買春者 ムンチのメンバーは来日後、東京の新宿・歌舞伎町を見学したという。男性たちが人目も気にせず未成年らしき少女と歩き、裏路地では買春の順番を待っていた。「性売買が当たり前になっている」。その恐怖や憤りをコンサートの聴衆に投げかけた。 「一番驚いたのは、少女に声をかける男性たちを誰も止めなかったことだ。なぜみんな見て見ぬふりをするのか」とジウムさん。ジンさんも「路上は買春者であふれていて、街全体が女性を狙っているようだった。『性売買はお金がたくさん稼げる』と車で宣伝していた」と困惑していた。 ▽ひとりではない 韓国では2000年と02年、性売買に従事していた女性が多数死亡する火災が続いたことなどから、2004年に性売買に関する新法を制定した。買春者や業者への処罰を強化し、被害者の保護を定めている。 「一致団結」を意味する韓国語から「ムンチ」と名付けた当事者ネットワークが結成されたのは2006年。メンバーにとって体験を語ることは「性売買の経験の再解釈」だという。どういうことか。
創立メンバーのジウムさんは「当事者間で話すことで解放感があった。語ることで、性売買の経験はこれ以上、傷や足かせにならないと感じられた」と回想する。ペクチさんは「ムンチは深く根を張った木のようだ。堅く、強く、根ざしている木になってこそ、当事者たちが新たに訪れることができる」と自負する。 ムンチの活動を見て、当事者が顔を出してしゃべれるんだと知ったというジンさんは「メディアや研究者のインタビューはあまりいい経験ではなかったが、ムンチが話すのを見て、私も話したいと思った。オンニ(お姉さん)に会えば、どこでも言えなかった経験や痛みを語ることができて、完全になれる。ありのままでいられると感じる」と打ち明けた。 インターネット上などでは、メンバーの家族まで引き合いに出して、トークコンサートを批判する声も上がっている。活動を続けるか否か迷った時、メンバーが気付いたのは「攻撃をしてくるのは、買春者や業者だ」ということだった。