「体はズタズタで見せられない…」小学5年の息子が10か所以上刺され殺害 謝罪なかった受刑者に遺族問いかけ 返ってきたのは初の「謝罪」70回以上分割払いした裁判費用 支払い終えても苦しみ続く
2015年、和歌山県紀の川市で当時小学5年の男の子が殺害される事件があった。事件から9年が経った今も、加害者からの謝罪や賠償がない。遺族は悲しみに暮れる中、去年12月から始まった新たな制度で受刑者へ思いを伝えた。受刑者は遺族からの問いかけにどう答えたのか。 【画像を見る】事件で切り裂かれたダウンジャケット
「ズタズタだから見せられない」10か所以上刺され息子殺害された父親
和歌山県紀の川市に住む森田悦雄さん(76)。森田さんにとって自宅近所にある空き地は特別な場所だ。森田さんはここで最愛の息子を奪われた。 (森田悦雄さん)「お父さん頑張っていくからってずっといっているんですけど、その言葉を毎年のように言ってるんですよね…うん」 小学5年生だった森田都史くん(当時11)。都史くんは2015年2月、刃物で頭や体など10か所以上刺され殺害された。 (森田悦雄さん)「体はズタズタやから見せられないとそんな風に言われて…都史くんの状態を見てもらうのは普通では考えられないぐらいひどい傷やって。(肩から)下まで包帯がぐるぐる巻きやった。あれだけ突かれて救急車来た時に心肺停止状態、即死に近い状態だった」
当時のダウンジャケットには事件の跡が今も
「先生が頭を持ち上げるようにして手を乗せたら、頭がい骨がパカっと割れ中まで血のりがたまっていた。」 「手を握り続けていたが徐々に冷たくなりつつあったので、『私の手から離れていくな』と感じていました。今までよう頑張ってくれてありがとうと耳元で言いました。何であんなことをほんまに…」 当時都史くんが着ていたダウンジャケットには事件の凄惨さを表すように服の複数の箇所が切り裂かれ、一部に血が付くなどの状態で残されている。都史君の傷は心臓にまで達するものもあったという。
殺害したのは近所に住む男 遺族への謝罪は一度もなく 賠償も払われず
逮捕されたのは近所に住んでいた中村桜洲受刑者(32)。殺人罪などで懲役16年の実刑判決を受け服役している。事件からまもなく10年が経つが中村受刑者から森田さんへの謝罪は一度も無い。民事裁判で認められた約4400万円の賠償についても1円たりとも支払われていないという。 (森田悦雄さん)「直接都史君のことをみているわけです。あれだけむごいことをして、そんな涼しい顔で…」「地に頭をつけてすりつけてでも謝るのが普通やって。自分がそれだけ大変なことをしたという自覚があまりないかなと」 森田さんはこれまでの民事裁判での費用などおよそ40万円を約6年かけ分割で支払い続け、ようやく去年末に支払いが終わった。しかし新たな不安が残っている。このまま支払いがされなければ、10年で時効を迎えるため、森田さんが再び提訴しなければならないからだ。 日本弁護士連合会が2018年に行った調査では、加害者に賠償を求めたケースで、裁判などで認められた。賠償額のうち実際に被害者に支払われた金額は、殺人事件で13.3%で、ほとんど支払われていないのが現状だ。