「体はズタズタで見せられない…」小学5年の息子が10か所以上刺され殺害 謝罪なかった受刑者に遺族問いかけ 返ってきたのは初の「謝罪」70回以上分割払いした裁判費用 支払い終えても苦しみ続く
「連絡一度もない」受刑者へ父親がぶつけた「鬼畜生だと思った」
中村受刑者は事件のことをどう考えているのか。森田さんは去年12月から始まった「心情伝達制度」を使って受刑者に初めて気持ちを伝えることを決めた。 心情伝達制度はまず刑務官が被害者や遺族の思いなどを対面で聞き取り、その内容を加害者に口頭で伝える。そして、それに対する反応や答えなどを刑務官が聞き取って被害者側に書面で通知するというものだ。 今年9月、森田さんは近畿地方のある刑務所を訪れ、職員と3時間にわたり面談をした。その中で加害者に伝えたい思いをまとめた。
「夢はプロゴルファー」「加害者から謝罪の言葉は今もない」
【森田さんが中村受刑者に伝えた内容】 「事件の起きる前まで、休みの日には、子どもたちと近所の公園で遊んだり、一緒に遊園地にも遊びに行った思い出が残っている。都史はゴルフが上手で、夢はプロゴルファーだった。富士山に一緒に行きたかった。それが事件で泡となって消えてしまった。当時、都史と遊んだことを思い出すと今でも辛くて仕方がない」 「事件のあった時、私は仕事中で小学校の教頭先生から一報があり、すぐに病院へ向かったが、道中は『都史がんばれ。都史がんばれ。』と言い続ける事しかできなかった。ICUにすぐに通されたが、医者から都史君は背中や頭など、約10か所も刺されズタズタの状況であったと聞かされ、鬼畜生だと思った」「都史の手はだんだんと冷たくなり、モニターは横線になり、私の手から離れていった。悔しい」 「都史の命日、毎年、献花をしているが加害者側の姿は一度も見たことがない。謝罪の言葉は今もない。2月5日、加害者自身はどういった気持ちでその日を迎えているのか。親と面会でもしているのであれば、事件について話し合いをしたり反省をしたりしているのか」 面談を終えた森田さんは「どういう流れになるのかというのも私は初めてですので」「少しでも私たちの気持ちが晴れるようになったらいいなとおもいます」と話した。
受刑者から返ってきたのは初めての謝罪
森田さんの思いを中村受刑者はどう受け止めたのか。約3週間後、森田さんのもとに「返事」が送られてきた。 【中村受刑者からの返事】 「事件を起こした日はとんでもないことをしたと後悔や悲しい気持ちになる。取返しのつかない事をした日です。毎年2月5日には被害者に手を合わせています。すみませんでした」 また森田さんが問いかけた謝罪や賠償の意思については次のように書かれていた。 【中村受刑者からの返事】 謝罪の意思はあります。謝罪の手紙を書いて、親に送ります。慰謝料の支払いの意志もあります。支払い計画は親と相談します。 返事に書かれていたのは中村受刑者からの初めての「謝罪」。そして賠償についても支払い計画を『親と相談する』とし、改めて手紙を送ると回答した。 森田さんはこれまで分からなかった受刑者の考えを知ることができ「大きな一歩になった」と話す。 (森田悦雄さん)「あー、ほんまに10段ぐらい飛び上がった感じ、今まで9年もこんな状態が続いていているでしょ。うちに親が謝罪に来るとか賠償の話とか、どんな風にしたらこっち側が納得するかをお話してもらったら、都史くんもやっと安心できると思うので」
受刑者の返事から1か月 未だに連絡なく不安に思う遺族
通知書を受け取ってから約1か月半。未だに受刑者からの手紙はない。森田さんは一抹の不安を感じるとも話した。 「一つも何の連絡もないから。それやから私も不安で、何でこんな気持ちになったのか。初めて文書を開けてみた時に『やった』という気持ちが私の中ではあったもんね。少しはよかったのかなと思うんですけど、今の段階ではそういう不安はだいぶ出てきた」 制度が始まって1年を迎える、「心情伝達制度」。加害者に思いを伝えたいという遺族の声を届けるものであるが、遺族を翻弄させるような制度にならないよう、心情に配慮した運用が求められる。