かのジウジアーロも絶賛! もはやブランド自体が消滅したけど「ユーノス500」のデザインが秀逸すぎた
巨匠が讃えた名5ナンバーセダン
「L-finesse」に「タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム」、「魂動デザイン」など、いまや国産メーカーの多くは独自のフィロソフィを掲げ、世界に通用するデザインを展開しています。 【画像】マツダ・ユーノス500のリヤまわりの画像を見る しかし、ネオ・クラシックカーブームが示しているように、80~90年代にも優れたデザインの日本車は存在していました。今回は、そんななかから世界が認めたグッドデザインな1台を振り返ってみたいと思います。
●4ドアクーペボディを先取りした意欲作
今回振り返るのは、1992年に発売されたユーノス500です。80年代末、マツダはバブル景気に乗るカタチで販売の5チャンネル化を実施、アンフィニやオートザムなどと並んで新設されたブランドがユーノスでした。 クルマ好きにとってユーノスといえば、これはもうロードスターと同義なワケですが、じつはユーノス・コスモやユーノス800、ユーノス・プレッソなどじつに個性的なラインアップを誇っていました。そのなかの1台がユーノス500です。 「十年基準」をキーワードに新しい高級車を目指したユーノス800の弟分として、V6エンジンを搭載したボディはいわゆる4ドアクーペの先駆け的な存在。 低く構えるフロントでは、抑揚あふれるボンネットフードにまず目を奪われます。そこに配される繊細な縦桟タイプのグリルはじつに上品。さらに、相似形の楕円型ヘッドライトとフォグランプがエレガントさを醸し出します。 サイドへ目を移すと、余計なラインを廃して豊かな張りだけで魅せるボディが秀逸で、フェンダーの抑揚を生かした柔らかいホイールアーチも見所。一見スマートに見えるキャビンは、1350mmの全高ながらしっかりとした居住性が確保され、サイドウインドウまわりの細いメッキモールが上質感を演出します。
●若手の実力派デザイナーが結集
リヤでは、若干下がり気味のトランク部がやはりエレガンスな雰囲気に。意外なほど大型のテールランプはじつにモダンで、リヤエンドをしっかり引き締めています。そのランプの外形や内側のバックランプとも、ヘッドライトの楕円形を反復している点が巧妙なところ。 また、多孔タイプのアルミホイールは非常に凝った造形で、これもまたエレガンスな雰囲気を増幅させる逸品。およそ純正品とは思えない贅沢な作り込みは好景気ゆえでしょうか。 インテリアでは、流れるような大きな面で構成されたインパネの美しさに驚きますし、そこに組み合わされた先進的なサテライトスイッチ類の細かな造形にもこだわりが。微妙な曲面に沿った空調口など、よくもこんな造作をしたものだと感心させられます。 三菱から移籍して間もない荒川 健氏をリーダーに、のちにルノーへ移った岡崎純氏、コンセプトカーの「KOERU」や「CX-7」を手掛けた小泉 巌氏など、才能ある若手が腕を振るった同車は、当時掲げた「ときめきのデザイン」をもっとも忠実に表現したといえます。 いわゆるエモーショナルなデザインで普遍性を感じさせるのは非常に難しいと筆者は感じていますが、あのジウジアーロが「コンパクトクラスでもっとも美しいセダン」と絶賛したことは、その点でもあらためて評価されるべきでしょう。しかも、この流麗なボディが5ナンバーサイズなのですから!
すぎもと たかよし