ドラマのロケ地にも 昭和の雰囲気漂う阿倍野のビリヤード場へ
浪速の女ハスラーの店
昭和の雰囲気漂う阿倍野のビリヤード場「保名倶楽部」へ THEPAGE大阪
地上300メートル、日本一の超高層ビル「あべのハルカス」から南へ約1キロ、レトロな路面電車が走る大阪市阿倍野区王子町「あべの筋」沿いの細い路地にツタに覆われたレトロな店舗がある。ビリヤード場「保名(やすな)倶楽部」だ。同店は「浪速の女ハスラー」としてその半生が書籍や舞台にもなった南川千代さんが74年前に開業し、3年前の千代さん亡き後は娘の平田範子さんが跡を継いで営業している。そんな保名倶楽部を訪ねてみた。
キャロムテーブルで選手権優勝者のアドバイスも
同店は千代さんが昭和17年ごろに開業した小さなビリヤード場だが、第2次世界大戦の空襲にも焼け残った築100年以上ともいわれるレトロな建物だ。 店内は開業時から変わらないレトロな雰囲気でいっぱい。ジャズが流れる中、普段よく目にするポケットのビリヤード台が1台、それ以外はポケットがない「キャロムテーブル」3台が置かれていた。 常連客はそれを使って四つ球やカードル(ボークライン)などを楽しんでいる。また、 日本選手権優勝者の長谷俊蔵さんも常駐しており、範子さんや長谷さんに指導してもらいながら、楽しめるのもこの店の特徴だ。 長谷さんをはじめ、選手権優勝者はこの台で技を磨き活躍を続けてきた。そしてみんな、開業から店を守ってきた「浪速の女ハスラー」と呼ばれた千代さんを慕っていた。「みんな千代さんに相談したり、指導してもらったりして育っていった。ほんとに面倒見のいい人でした」と範子さんも振り返る。
レトロな雰囲気評判でNHKドラマなどの撮影地の常連
このレトロな雰囲気が評判を呼び、1987年にはNHKドラマ「おとんぼ」のロケ地にもなった。主演は村上弘明さん、ミヤコ蝶々さん。2日間貸切で撮影され、ビリヤードの経験がなかった村上さんに「つきっきりで指導してん」と範子さん。 「手取り足取り指導して、最後にはキューも差し上げました。かっこよかったです」とうれしそうに語り、店に飾ってある当時の写真を見せてくれた。 以来、数々のドラマの撮影にも使用された。中には「犯人のたまり場として使わせてほしい」と頼んできたドラマもあったが、そこは範子さんが「イメージが悪い内容のものはお断り」とバッサリ断った。 だが「数日たって『台本をかえてきました。これならどうでしょう』とテレビ局の人がきて、内容的にOKやった。それだけここを使いたかったんやねえ」とうれしそうに振り返った。