【チャレンジC回顧】“フロックではない”ラヴェルが完全復活 成長曲線と厩舎の努力が合致しここから最高潮へ
矢作厩舎の信念と血統
先日のエリザベス女王杯で2着だったラヴェルが正攻法で重賞2勝目。前走は人気薄での激走だったが、決してフロックではなく、きっちり次戦につなげて復調を証明した。リバティアイランドが同世代の牝馬で唯一先着を許した存在であり、能力があるのは間違いない。だが、阪神JFでの11着から長いトンネルに入る。 【チャンピオンズカップ2024 推奨馬】勝率66.7%に該当で信頼度◎! 国内は連対率100%で盤石(SPAIA) 真の要因は陣営に聞かないと分からないが、外野はどうしたって成績を急落させた牝馬を評価できない。こういった成績の牝馬は思いのほか多く、たいていは浮上のきっかけをつかめずに終わっていく。 牝馬は本能で走るといわれる。グランアレグリアやアーモンドアイが長くトップ戦線で結果を残してきたのは、その能力値もさながら、最後まで競馬に前向きな本能に敏感だったことが大きい。サラブレッドの本能とは、危険をいち早く察知し、逃げること。これを競走に応用したのが競馬だ。本能が強い牝馬は一方で、なにかのきっかけでそれが切れてしまう。切れた糸は簡単には修復できない。 だからこそ、ラヴェルの復活は大きい。さすがは矢作芳人厩舎。その能力を信じ、必ず、再び結果を残せる日がくると確信をもって、ラヴェルと向き合ってきた。信念をもって柔軟に選択を重ね、模索に模索を重ね、復活に導いた。牝馬の復活は厩舎力の賜物といえよう。 姉ナミュールももどかしい成績から4歳秋に大輪を咲かせた。母サンブルエミューズの成長曲線と厩舎の愚直な姿勢がようやく合致する時期を迎えたということだろう。父キタサンブラックもその産駒イクイノックスも古馬になり、ポテンシャルを結果につなげられた。チャレンジC勝利はラヴェルにとって次へ進むきっかけでもあった。 馬名の由来でもあるフランスの作曲家モーリス・ラヴェルといえば、管弦楽の魔術師と呼ばれ、代表曲にバレエで有名な「ボレロ」がある。最初から最後まで同じリズムが繰り返され、メロディにスネアドラム、フルート、クラリネットと次第に楽器が重なっていき、単調なリズムに音の色を重ね、厚みをもたせていく。最後は多くの楽器によって大編成を形成し、メロディはたちまち迫力あるものに変わり、最高潮へ。最後の盛り上がりにたどり着く過程を味わう楽曲だ。 ラヴェルの競走生活はまさに「ボレロ」のように、ここからクライマックスを迎える。その壮大さを楽しみたい。