漫画人気はマイナー競技の発展には直結しない?「4年に一度の大会頼みは限界」国内スポーツ改革の現在地
漫画、ドラマ人気は競技の発展に直結しない?
――若林さんは、漫画家の野田サトル先生のアイスホッケー漫画『ドッグスレッド』や『スピナマラダ!』で技術監修をしているそうですね。具体的にどのような点を監修されているのですか? 若林:ホッケーの場面で起きることが現実から飛躍しすぎないように描写をチェックしたり、時代ごとのルールや防具の変化を踏まえて、整合性についてアドバイスしたりしています。 ――サッカーやバスケットボール、バレーボールでも、人気漫画をきっかけに競技を始める子どもたちがいると思いますが、アイスホッケーでもその影響力は感じますか? 若林:データがないのでなんとも言えないのですが、実感としてはまだまだだと思います。例えば『キャプテン翼』は世界中のプロサッカー選手たちに影響を与えて、漫画が競技の人気に貢献した成功例だと思います。ただ、すべてのスポーツが同じように漫画の影響で発展する、という夢のような話はありません。特に、マイナースポーツで漫画やドラマの人気を競技の発展につなげるためには、競技を取り巻く人たちが自分たちで普及できる体制を作っておかなければ難しい。 2004年にフジテレビで放映された「プライド」というアイスホッケーのドラマは、脚本は野島伸司さん、主演はキムタクという、これ以上ないキャスティングで大ヒットしました。 ――覚えています! 当時、夢中で見ていました。 若林:その時期、アイスホッケーをやりたいという人が一気に増えて、都市部では体験入部が6カ月待ちという事態になったクラブもあったらしいんです。でも、6カ月待ったら、その人の熱はもう冷めてしまいますよね(苦笑)。しかも、入部してもほとんど試合に出られなくて、やめてしまうケースもあったようです。 ――そこまでの変化を予測して準備できていなかったのですね。 若林:はい。そういうクロスメディアへの露出が起爆剤となって「競技を始めたい」という人が増えた時に、その状況を捌ける能力やシステムがなければ意味がないし、その構造を作るのは漫画ではなく、人間です。アイスホッケーでは、ドラマのほかにオリンピックやNHL(ナショナルホッケーリーグ)の日本での公式戦開催など、競技が発展するきっかけが何度かありましたが、結果的にすべて活かせなかった。それはもったいないことですよね。