南海トラフ地震を想定した防災 強い構造の堤防や高さ13メートルの防潮堤
東海地震の予知情報にもとづく防災から、マグニチュード8を超す巨大地震、南海トラフ地震の震源域全体を見据えた新たな防災に向けて、国や関係自治体は11月から暫定的に取り組みをスタートさせた。国は静岡県などをモデル地区に指定し、自治体レベルでの防災対応についても新たな取り組みを図っていくようだ。その静岡県ではすでに南海トラフ地震に備えた堤防や防潮堤の建設が進んでいる。 【動画】最大でM9クラス 南海トラフ巨大地震ってどんな地震?
駿河湾、遠州灘沿岸で進む津波対策
静岡県焼津市一色地区から大井川に至る約5キロの駿河湾海岸で今、堤防を粘り強い構造に改良する工事が進んでいる。堤防は現状でも海抜から6.2mまであり、東海地震を想定したL1クラスの津波に備えた高さになっている。 しかし、新たな工事により、波によって倒壊しない粘り強い構造の堤防に改良するという。その背景には、2011年3月に発生した東日本大震災の際、堤防を越えた波によって周辺の土が削られて堤防が崩壊し、津波で押し寄せた海水すべてを域内に流入させてしまった教訓がある。 東北の被災地域では復興整備において、底部をコンクリで補強した強固な堤防が設置されてきたが、焼津市河川課によると、東北の被災地以外で同様の構造の堤防が設置されるのは初めてという。同海岸は国の直轄海岸となるため堤防補強工事は国土交通省によって行われている。 焼津市は南海トラフ地震を想定し堤防に併設する形で堤防よりさらに2メートル高い盛り土を堤防補強工事と並行して進めている。同様の工事は大井川を越えた吉田町でも行われており、国と市、町が連携して整備を進めている。 一方、静岡県の遠州灘海岸では、浜松市が沿岸の約17.5キロメートルにわたり高さ13メートルの防潮堤を整備している。平成31年度の完成を目指しており、整備されれば南海トラフ地震の津波により想定される宅地の浸水被害が約7割減り、宅地のうち浸水の深さが2メートル以上になる面積は97%低減するという。 浜松市の防潮堤は、整備費用として企業が約300億円を拠出して行われており、民間の力が大きく貢献している。焼津市から吉田町にいたる沿岸、そして浜松市の遠州灘沿岸で、それぞれ南海トラフ地震の津波に備えた整備が進んでおり、その間に位置する御前崎市と牧之原市においても現在、整備に向けた検討が行われている。