元裁判官が教える「信頼できる弁護士」の見極め方
弁護士委任契約で注意すべきこと…弁護士費用、報酬
弁護士への委任契約をするに当たっては、契約書が作成されます。 弁護士に支払う費用については、「費用」と「報酬」があります。費用(交通費、宿泊費、コピー代等の「実費」)については、簡単な事件なら5万円から10万円程度ですむこともある一方、弁護士の出張が多い事件や長引く事件では、金額がかなり増えることもあります。 また、訴え提起のための手数料、郵便送達のための郵便料金等の「国に納付する費用」については、これとは別に負担する必要があります。 報酬のうち着手金や日当については、その時点でわかります。しかし、成功報酬については、一律の計算方法がなく、事案によっても大きく異なり、成果に応じた幅もありうるので、可能な範囲で正確な説明を聴いておくことが必要です。支払の段階で行き違いが生じて気まずくなる例もあるからです。 この説明を正確にしない弁護士は、そのことだけでも避けたほうが無難でしょう。 なお、最初の相談でまだ迷いが残る場合には、とりあえず、「家族ともよく相談して、お願いするかどうか決めたいと思います」と弁護士に告げた上で、もう一度委任の是非についてじっくり考えてみるという方法もあります。迷いがある場合には、数日間の冷却期間を置くと正しい判断ができることが多いものです。もっとも、返事をする期限は明確にしておくべきでしょう。
さまざまな紛争解決方法
法的紛争が生じた場合にとりうる方法は、民事訴訟だけではありません。 弁護士に委任する場合にも、訴訟という手段が適切かどうかは、よく相談する必要があります。そうした相談や説明をとばして性急に訴えの提起をすすめる弁護士には、注意すべきです。 具体的な方法としては、以下のようなものがあります。 (1)各種のADR(裁判外紛争解決手続)は広く利用されています。 たとえば、裁判所における民事調停や家事調停、公害等調整委員会、建設工事紛争審査会等による調停、仲裁等です。仲裁とは、当事者間の合意に基づいて第三者である仲裁人に紛争の解決をゆだねる制度です。 (2)金銭請求事案で、事実に争いがないかあるいは相手方の言い分が法的にみてほとんど問題にならないような場合には、まずは督促手続(民事訴訟法382条以下。裁判所書記官が、形式的な審査を行った後に「支払督促」を発する)を選択するのが効率的です。 これは、督促異議の申立てがあると通常の民事訴訟に移行しますが、その場合でも、多くは和解か簡単な判決で終了しています。 (3)迅速な救済の必要性が高い権利の早期の実現については、仮の地位を定める仮処分の申立てを選択することも考えられます。たとえば、建築工事や通行妨害の禁止等です。 (4)通常の民事訴訟手続以外の簡易な略式訴訟手続としては、すでにふれた少額訴訟(民事訴訟法368条以下)、労働審判法上の労働審判等があります。 (5)最後に、あなたの委任した弁護士が、相手方と、場合によっては相手方のほうでも弁護士を立ててもらった上で、お互いに証拠を開示して話合いを行うという方法もあります。双方に良識と誠意があるならば、これもまた、適切な紛争解決の方法です。