「賃上げ、投資促進、子育て支援強化に全力」岸田首相会見1月4日(全文1)
日本をスタートアップのハブに
こうした新たな官民連携の成否を最終的に決める鍵は民間のアニマルスピリットです。幸い、わが国には、社会課題を解決しよう、社会変革を促そう、世界に打って出よう、挑戦の心を持った方々が多数おられます。そうした方々の挑戦を妨げる規制は断固、改革していきます。また、皆さんが失敗を恐れず果敢に挑戦できるよう、昨年決定した「スタートアップ育成5か年計画」を着実に実行していきます。その中でも、日本をスタートアップのハブとするため、世界のトップ大学の誘致と参画によるグローバルキャンパス構想を本年、具体化していきます。 そして今年のもう1つの大きな挑戦は少子化対策です。昨年の出生数は80万人を割り込みました。少子化の問題は、これ以上放置できない待ったなしの課題です。経済の面から見ても、少子化で縮小する日本には投資できない、そうした声を払拭しなければなりません。子供ファーストの経済社会をつくり上げ、出生率を反転させなければなりません。 本年4月に発足するこども家庭庁の下で、今の社会において必要とされるこども政策を体系的に取りまとめた上で、6月の骨太方針までに将来的な子供予算倍増に向けた大枠を提示していきます。しかし、こども家庭庁の発足まで議論の開始を待つことはできません。このあと、小倉こども政策担当大臣に対し、こども政策の強化について取りまとめるよう指示をいたします。 対策の基本的な方向性は3つです。第1に、児童手当を中心に経済的支援を強化することです。第2に、学童保育や病児保育を含め、幼児教育、保育サービスの量、質、両面からの強化を進めるとともに、伴走型支援、産後ケア、一時預かりなど、全ての子育て家庭を対象としたサービスの拡充を進めます。そして第3に、働き方改革の推進と、それを支える制度の充実です。
異次元の少子化対策に挑戦
女性の就労は確実に増加しました。しかし女性の正規雇用におけるL字カーブは是正されておらず、その修正が不可欠です。その際、育児休業制度の強化も検討しなければなりません。小倉大臣の下、異次元の少子化対策に挑戦し、若い世代から、ようやく政府が本気になったと思っていただける構造を実現すべく大胆に検討を進めてもらいます。以上、今年は賃上げ、投資促進、子育て支援強化に全力で取り組みます。賃金が増え、日本企業が強くなり、子供が増える。そんな社会を次の世代に引き継いでいきます。 そしてこの伊勢の地を訪れるたびに思い出すのは7年前の伊勢志摩サミットです。G7議長としての安倍総理の卓越したリーダーシップの下で、世界経済の安定化、海洋秩序の維持など、多くの成果が上げられました。7年の時を経て、本年再びわが国はG7議長国を務め、5月にはサミットを開催します。今年の開催地は広島です。ロシアのウクライナ侵略という暴挙によって国際秩序が大きく揺らぐ中で、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を守り抜くため、そうしたG7の結束はもとより、G7と世界の連帯を示していかなければなりません。同時に、対立や分断が顕在化する国際社会をいま一度結束させるために、グローバルサウスとの関係をいっそう強化し、世界の食料危機やエネルギー危機に効果的に対応していくことが求められます。 また、世界経済にさまざまな下方リスクが存在する中で、G7として世界経済をしっかりと牽引していかなければなりません。さらに感染症対策や地球温暖化問題などの地球規模課題においてもリーダーシップの発揮が求められます。そしてロシアの言動により核兵器を巡る深刻な懸念が高まる中、被爆地広島から世界に向けて、核兵器のない世界の実現に向けた力強いメッセージを発信してまいります。こうした考えの下、まずは諸般の事情が許せば1月9日からフランス、イタリア、英国、カナダ、そして米国を訪問し、胸襟を開いた議論を行う予定です。G7サミット議長として、今年1年、強いリーダーシップを発揮してまいりたいと思います。 このうち米国、バイデン大統領との会談は、G7議長としての腹合わせ以上の意味を持った大変重要な会談になると考えています。わが国は年末に安全保障政策の基軸たる3文書の全面的な改定を行いました。そしてそれを形あるものにする防衛力の抜本的強化の具体策を示しました。これを踏まえ、日本外交、安全保障の基軸である日米同盟のいっそうの強化を内外に示すとともに、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた、さらに踏み込んだ緊密な連携をあらためて確認したいと思います。